たのすけのプロフィール

はじめまして。たのすけと申します。

国内の日本語学校で専任講師を経て

現在、オンライン日本語教師として働いています。

 

 

子供のころの話をすると、私は恥ずかしがり屋で引っ込み思案な子供でした。

友達が大勢で遊んでいると、「私も一緒に遊んでいい?」そんな一言さえも言うのが苦手だったんです。

 

そんな私が日本語教師になるなんて、子供のころの自分だったら想像できなかったことだと思います。

 

今では、日本語教師になって私の世界は大きく広がり、自分自身も変わったと思います。

「日本語教師になってよかった」

「日本語教師って楽しい!」

そう感じています。

 

でもそこに行きつくまでには紆余曲折があって、辞めようと思うこともあったり、躓いたことなどもありました。

私の失敗談も交えながら、自己紹介を書いてみたいと思います。

 

日本語教師になるまでの経緯

ダメダメだった大学生の自分

私は大学生のとき、「大学が楽しくない…」と感じて、大学に通う意味がわからなくなりました。

しまいには、サボれる授業はサボるようになってしまいました。

やりたいことも目標もないし、大学も真面目に通わないし、ダメな大学生だったと思います。

 

そもそも、その大学を決めた理由は、「自宅から通えるから」という単純な理由でした。

 

 

私は中学生のときに父を亡くしており、祖父からは「家にいてほしい」と、いつも言われていたんです。

祖父が私に家にいてほしいと言ったのは、母が一人になってしまうから、私は女の子だから、という理由でした。

 

「大学は家から通えるところから」

 

そう言われてきました。

 

 

実家を出たかったわけじゃないけど、

兄は自由にしているのに、どうして私だけ…。

自分の好きなように選んで決めちゃいけないの?

 

もやもやもや…

 

選択肢を誰かに決められてしまうのは「嫌だ」と感じていたけど、

父がすでに亡くなっていたから、祖父の言い分もしょうがないと思っていたので、家から通える範囲で大学を選びました。

 

でも、本当は心の中では納得していなくて、

一人暮らしをしている兄や友達がうらやましかったです。

 

一人暮らしだから自由でいいなぁ

私も夜遅くまで遊びたいなぁ

 

と本当は思っていたけど、

私は実家暮らしだからしょうがない。家から通えるなんてありがたいことだ。

無理やり自分を納得させていました

 

 

だけど、しまいには、

 

「やりたいこともなくただ毎日同じことを繰り返しているのは、今の大学に入ったからだ」

「今の大学に入ったのは、祖父に言われて選択肢がなかったからだ」

「大学が楽しくないのは一人暮らししていないからだ」

 

と思ってしまい、

「大学が楽しくない」「通う意味がない」と思ってしまった理由を

人のせい、環境のせい、何かのせいだと思ってしまう自分がいました

 

 

行きたいと思った大学もあったけど、家庭の事情もわかっていたし、

当時は祖父の意志を無視して、その大学を選んで一人暮らしをすることは、私にはできなかったです。

 

それでも納得して今の大学に入ったはずなのに、今の状況が楽しくないと感じてからは、祖父のせい、環境のせいに感じてしまうことがありました。

 

本当はその環境でどう過ごすかを決めるのは自分なのに…。

 

今思うと、わがままなお恥ずかしい話です。

 

フィリピン留学が大きな転機となった

ダメダメ大学生だった私ですが、自分が変われる「何か」に出会いました。

それはフィリピン留学でした。

 

留学体験記を見ると、キラキラして見えて、そこには私が探している「何か」がありました。

 

「留学してみたい!そこに何かある!」と私は直感しました。

 

「これだ!」と思ったのはよかったんですが、なかなか母にフィリピン留学に行きたいことを伝えられなくて、うじうじうじうじしていました。

理由は、高校生のときに、私の言葉から母を傷つけてしまったと感じた過去があったからです。

 

父が亡くなってから、パートだった母は夜勤の仕事がある介護の仕事に転職しました。

新しい仕事に転職して大変だったはずだし、私たちのために一生懸命働いてくれていたのに、家に誰もいないことをいつも寂しく感じていた私は、

「どうして家にはいつも誰もいないの!?誰もいなくていつも寂しい!!」

と母に言ってしまったことがあります。

 

母は悲しそうに

「…お母さんも辛いんだよ…」

とポツリと言いました。

 

 

その言葉を聞いてハッとしました。

 

どうして自分だけが寂しい思いをしていると思ったんだろう。

母も寂しくないわけがない。辛くないわけがない。

 

後になって、子供ながら反省しました。

 

 

それからというもの、誰かに自分の気持ちや本音を伝えたら、

「相手を傷つけちゃうんじゃないかな」

「嫌な思いにさせちゃうんじゃないかな」

と思い、あのとき以降、自分の気持ちや本音を言うのが怖くて苦手になっていました

 

 

母に自分の気持ちを伝えることは本当に勇気のいることだったのですが、

「自分を変えたい!」「今の状況から抜け出したい!」そう思ったので、

思い切って「フィリピン留学に行きたい」ということ、

私が今どう感じていて、なぜフィリピン留学に行きたいのかを母に伝えました。

 

母は驚きはしたものの、応援してくれました。

 

 

やりたいこともなく、ただ同じ毎日を繰り返している生活に物足りなさを感じながらも、

今まで自分のすることに自信がなくて、

周りと同じでいなきゃ、いい子でいなきゃと思って、行動する勇気が持てずにいたけど、

「変わりたい!」「変えたい!」と思って行動したら、人生がいい方向に向かい始めました

 

いざ「フィリピンに留学する」という目標が決まったら、感じる世界や見える世界が変わったんです。

 

「今の状況を変えられるのは自分だけ」と強く感じました。

 

 

実際にフィリピン留学に行って、私の価値観は大きく変化しました。

 

今まで自分が恵まれているなんてあまり感じたことはなかったけど、

「普通に暮らせていること=恵まれていること」

に気づいて、周りの人や環境に感謝もできるようになったし、周りの人と違っても気にしなくていいということを学びました

 

日本よりオープンなのかもしれませんが、フィリピンには、性同一性障害の人がとても多いんです。

 

留学先で担当してくれた英語の先生は、男性だけど心は女性という人だったんですが、

お化粧をして綺麗な服を着て、キラキラしていて、女性よりも女性を楽しんでいるように感じました。

 

周りの目なんか気にせずに、自分の気持ちに素直になって、自分を表現して、

周りと違うことを一切隠さず、堂々としています。

 

そういう姿は、祖父の意見や人の目ばかり気にして生きてきた私には目からうろこでした。

 

 

「男だから」「女だから」は関係ない。

いろんな人がいて、それぞれ価値観も違う。

でも、それでもいい。

周りの目を気にしなくても大丈夫。

 

そう教えてくれました。

 

そして、海外に興味を持ち、

「海外と関われる仕事をしてみたい」

「海外に住んだり、働いてみたい」

と思うようになりました。

 

日本語教師へチャレンジすることを決意

大学生のときに日本語教師に興味を持ったものの、大学卒業時にはまだ日本語教師になる勇気はありませんでした。

なかなか人と違うことをするのって勇気がいることで、そんな勇気はまだなかったんです

 

ですが、一般企業に就職して数年が経ったころ、社内旅行で上海に行ったことがきっかけで

私の中で、海外に対する憧れがふつふつと蘇りました。

それと同時に、「日本語教師にチャレンジしてみたい」という気持ちが強くなってきました。

 

「海外に住んでみたいな」「海外で働いてみたいな」「ワーキングホリデーに行ってみたいな」

とも思っていたので、海外で住んで働く手段としても日本語教師は最適だとも感じていました。

 

いつも人の目や周りが気になってしまっていたけど、社会人を経験して、ちょっとは強くなれた。

チャレンジするなら、今しかない!

そう思って、日本語教師になる決意をし、日本語教師への道を歩み始めたのでした。

 

 

実際に日本語教師養成講座で実習を経験し留学生と交流しているうちに、

 

「楽しい!!」

「自分にもできるかな…??」

 

そう思って、いつの間にか大学生の頃に憧れていた日本語教師になってしまいました。

 

日本語教師になってからのこと

ドキドキしながらの初めての授業

そして、いよいよ初めての授業、、、

 

ドキドキ、、、

 

ドキドキ、、、

 

今日のために、何回も教案を練り直して、壁に向かって何回も何回も教案を読んで、

頭の中で何度もシュミレーションをしてきた。

昔は人前で話すなんて苦手だったし、したくないと思っていた。

 

でも、今は日本語教師になって、初めての授業を迎えようとしている。

 

もう、やるしかない。

 

 

「お、おはようございます・・・!!」

 

 

あれ?声裏返っちゃった…?だ、大丈夫…?

 

ドキドキ、、、

 

ど、どうしよう、学生みんなが私を見ている…

 

ドキドキ、、、

 

 

初めての授業は緊張しまくりでした。

何とか緊張を学生たちに悟られないように、自分なりに教師らしく振舞い、

とにかく学生の顔を見て、昨晩何回もシュミレーションした通りに授業を行いました。

 

 

すっごく緊張したけど、温かく迎えてくれた学生たちのおかげで、初めての授業を無事終えることができました。

 

 

初授業を終えて、、、、

 

日本語教師って楽しい!!自分にもできた!!

 

もともとの性格は内気で、人前で話すのが苦手でした。

だからこそ余計に、自分でもできた!!と感じることができて、喜びと充実感、達成感でいっぱいでした。

 

毎日が新鮮で楽しい!

日本語教師になってから、毎日が新鮮でした!!

学生たちの国の文化は知らないことばかりで、日本との違いに驚きながらも、文化の違いを楽しくも感じていました。

 

国や文化が違う学生たちと触れ合い、日本語や日本の生活に慣れるサポートできることに、やりがいを感じていました

 

子供の頃に戻ったみたいに、毎日わくわくして、土日は学校がお休みなので、月曜になるのが待ちきれなかったです。

 

休みの日は、どうやったら楽しくてわかりやすい授業ができるのか、教案作成や授業準備に明け暮れる日々を送っていました。

休みの日が授業準備で終わってしまっても、大変だなんて思いませんでした

「楽しい授業を提供したい!」それだけでした。

 

仕事中心の生活を送っていましたが、

「やりがいがあるってこういうことなんだな、刺激があるってこういうことなんだな」

と思っていました。

 

日々の生活も「授業のネタで使えそう」とか、仕事中心の生活に一変しました。

 

「日本語教師を辞めよう。」そう思う出来事が起こった

ですが、日本語教師を辞めようと思う出来事が起こりました。

私が日本語教師になって、3・4か月目ぐらいだったと思います。

 

単刀直入に言いますと、授業を放棄しました。

もっと丁寧に言うと、授業をすることをやめて授業中にクラスから出て行きました。

 

決してトイレが我慢できなかったわけではなく、もう授業をしたくなかったのです。

その場にいて、それ以上授業を続けることができなかったのです。

 

授業を放棄した原因は、、、

授業を放棄してクラスから出て行った理由は、「学生が全く授業にやる気がなかった」からです。

普段から問題の多いクラスで、他の先生方からも「授業をやりにくい」との声は上がっていました。

 

私が最初に働いていた日本語学校は、どちらかというとあまり質のいい学生が多い学校ではありませんでした。

ちょっと語弊がありますが、純粋に日本語の勉強がしたくて留学に来たわけではないような…

高校卒業後に日本留学に来た学生もいて、やんちゃなタイプが多かったです。

 

さまざまな背景を持った学生がいて、

母国では親の手に余って日本留学をさせられた学生

日本に留学すれば、日本語を勉強しながらお金が稼げると思い留学に来たという学生もいました。

 

そんな学生は、日本語のモチベーションがもちろんあるわけもなく、

 

日本語の勉強よりもアルバイトに一生懸命。

昼間よりも時給の高い夜に工場のアルバイトをして、そのまま学校に来て授業を受ける。

アルバイト以外の時間は、携帯電話でゲームやYou Tubeを観るとこに夢中。

夜になれば、部屋に集まって飲み会ばかり。

 

もちろん、真剣に真面目に日本語の勉強をしている学生もいました。

 

家族の期待を背負って日本に来た学生

日本の大学や専門学校で学びたいことがあるという学生

日本で就職したい学生

日本語ができるようになって成功したい!と話している学生

 

日本に来たときは、目をキラキラさせて希望に満ち溢れていたように思います。

 

 

その日の授業は、

机に伏せて寝ている学生

携帯電話のゲームで遊ぶ学生

携帯電話で映画を観ている学生

友達とのメッセージのやり取りに夢中な学生

 

何回注意してもその時の返事ばかりで、全く聞く気配はありません。

 

だんだん私の中で、

怒りのような、悲しみのような、悔しさのような、複雑なドロドロした感情がこみ上げてきました

 

声を振り絞って言ったのは「もう今日の授業は終わりです」

頭の中をいろんなことが駆け巡っています。

 

「日本語を勉強する気がない学生に授業をしても意味ない」

「授業なんてやっても無駄だ」

「そもそも、私の授業は聞く価値がないのかな…」

「何のために一生懸命授業準備をしたんだろう」

 

このときは日本語教師になって3・4か月目で新人だったので、授業準備は楽ではありませんでした。

学生たちに楽しい授業を提供したい日本語が上手になってほしいと思って、

授業準備はしっかりやっていたつもりでした。

 

 

その結果がこれ…

 

自分は何をやっているんだろう。

 

どうして日本語教師をしているんだろう。

 

何が楽しくて日本語教師をしているんだろう。

 

 

もう日本語教師を辞めよう。

 

 

そう思って、

 

「もう今日の授業は終わりです」

 

 

私は静かにそう一言を言って、教室を出ました。

「絶対に泣くもんか!」と思って、声を震わせながら、そう言うのが精いっぱいでした。

 

「授業をしても意味がない」と、授業を放棄して、教務室へ帰った

クラスから出た私は教務室に帰りました。

怒りというよりは、悲しいという気持ちでした。

こらえていた涙は教務室に入った瞬間、こぼれ落ちてきました。

 

 

教務室にいた先生はびっくりしていました。

そりゃ、びっくりしますよね。授業をしているはずの人が、教務室に戻ってきて、しかも涙を流しているんですから。

 

「どうしたんですか?先生」

と声をかけてくれましたが、事情を話そうと思えば思うほど、涙が出てうまく説明できません。

 

「私には無理なんだ」

「やっぱり日本語教師は向いていないんだ」

「もう日本語教師を辞めよう」

「今日にでも辞めることを伝えよう」

 

教務室に戻った私は、もう日本語教師を辞めることばかり考えていました。

 

学生が教務室に「日本語を勉強したいです」と謝罪に来た

少しして、クラスの代表として学生数名が教務室に来ました。

 

「先生、ごめんさない」

 

クラスでやんちゃな学生たちです。謝罪に来たようです。

きっと私が急に教室から出て行ったので、何か感じ取ったんでしょう。

 

「私たち、日本語を勉強したいです」

 

「先生、ごめんさない」

 

 

感情のままに飛び出した私は、この後どうすればいいのかわかりません。

どうすることもできないまま、そこから動けないでいました。

 

そのうち、学生に連れられるように私は教室へ戻りました。

 

授業を放棄した理由、学生に思いの丈をぶつける

そのとき、私は正直に自分が思っていることを伝えました。

 

日本語を勉強するつもりがないクラスで授業をしても意味がないこと

授業を受けても意味がないと思っているなら、どう授業をよくしたらいいのか教えてほしいこと

 

それから、私が一番悲しかったのは、「何のために日本に留学に来たのか」その目的を忘れてしまったことでした。

それが授業を受ける態度にも出ているのではと思ったのです。

 

学生たちは日本に来たときは、目をキラキラさせながら、

「日本はいい国です」

「今、日本にいます。とても嬉しいです」

と言っていました。

 

それが今では、日本に希望を持って留学に来たはずなのに、日本語を勉強したい意志は全く感じられません。

 

「日本語が上手になりたい」と言った気持ちは嘘だったのか?

日本に来て何をしたかったのか?

何のために日本に来たのか?

日本に留学するためのお金は、国で両親が一生懸命働いてくれたお金ではないのか?

 

 

その時の私は、冷静…ではなかったです。

 

自分の感情を表に出すことは苦手だと思っていたし、あんなに誰かに向かって、訴えるように話したことはありませんでしたが、

あの時は、感情のままに話してしまいました。

 

振り返って、よく自分に言えたなぁ…と感心?いやいや、今更ですが、穴があったら入りたいです。。。

 

こんなに熱くなってしまったのには理由があって、学生たちの事情を知っていたからです。

学生たちは、日本よりも物価の安い国から来ており、学費を払うことや日々の生活にもお金に余裕はありませんでした。

学生たちが日本に留学に来た目的は、「自分探し」ではないです。

 

家族の期待を背負って来た学生

親戚からお金を借りてまで留学に来た学生

日本語を学んで成功して家族に楽をさせてあげたいと話す学生

 

なのに、

いつの間にか楽なほうに流されてしまっています。

いろんな可能性を持っているのに、日本語を勉強する目的や可能性を忘れてしまっています

 

とにかく、とにかく、伝えました。

 

熱量に驚きながらも、学生は話を聞いてくれた

急に熱くなって何言っているんだこの先生は、と思った学生もいるかもしれません。

 

でも、学生たちは、顔を上げて、目を見て、真剣に話を聞いてくれました

 

まだ、あまり日本語が上手な学生たちではありません。

私の話したことをどこまで理解できたかわかりませんが、

真剣に聞いてくれていたのは、目を見てわかりました

 

 

話を終えた後は、授業の続きをしました。

そこには、真剣に授業を聞いて、一生懸命日本語を勉強しようとしている学生たちがいました。

 

日本語教師を辞めようと思ったけど、学生のおかげで続ける決意をした

この出来事で、大学生の頃に憧れていた日本語教師になったものの、もう辞めようと思いました。

 

自分には日本語教師は向いていなくて、やっぱり自分の性格には合わないのではないのか

と、日本語教師を続けたい気持ちがなくなっていました。

 

自分の授業は面白くないし、聞いても意味がないと思っているのではないか、

と、授業をするのが怖くなってしまい、

「もう日本語教師を辞めよう。」と本気で思っていました。

 

 

しかし、そのときに、学生のおかげで日本語教師を続けようと思えました。

 

後から出来事を知った他のクラスの学生が教務室に来ては、

「先生、大丈夫?」

「私先生のクラス、いつも楽しい」

「先生は本当に親切です」

「日本に来て日本語が上手になった。先生、ありがとう」

と、色々声をかけてくれました。

 

その後も、授業を放棄したクラスの学生も教務室に来ては、

「先生、私日本語の勉強頑張ります」

「絶対、成功します」

と声をかけに来てくれました。

 

こんな私でも声をかけてくれる学生がいるんだと思ったら、あと少しだけ頑張ろうかなと思えました

 

あのクラスの学生たちの日本語はまだまだです。

まだ日本で大学や専門学校に行けるような日本語レベルではないし、まして、日本で就職できるような日本語力はありません。

 

それから、日本語教師になって初めて担任をした学生たちの卒業はまだ先です。

学生たちは初めての授業で緊張しまくっている私を温かく迎えてくれて、緊張をほぐしてくれました。

初めての授業を終えた後に、すっごく面白かった!日本語教師になってよかった

と思わせてくれた学生たちです。

 

「絶対に卒業まで見届けたい」と思いました。

 

辞めるのは簡単です。でも、きっとここで日本語教師を辞めたら後悔すると思いました。

辞めるのは学生が卒業した後でも遅くないと思い、

もう少しだけ日本語教師を続ける決意をしました。

 

日本語教師として試行錯誤の日々

日本語教師を本気で辞めようと思った出来事を経て、もっと日本語教師として成長したいと思うようになりました。

 

先輩日本語教師の方の授業見学をさせてもらい、

  • どう導入をしているのか
  • 練習のやり方
  • 学生への指示の出し方
  • 話し方、話すスピード
  • 学生への接し方

など、自分にできていなかったこと、いいところを真似して、取り入れていきました。

 

授業の後は、反省することも多かったですが、

  • どの説明や指示がわかりにくかったのか
  • もっと学生の発話を促すにはどうしたらいいのか
  • もっとわかりやすい導入をするには、どうしたらいいのか
  • 学習した文法を使えるようになるには、どのような練習や活動をしたらいいのか
  • 時間配分など、うまく行かなったところはどこか

など、反省点をそのままにしないで、次に同じところを授業するときに、前回の反省と同じことをしないようにしました

 

限られた授業時間を最大限に生かすにはどうしたらいいのか

日本語の知識があっても会話力がない学生にはどうしたらいいのか

日本語能力試験のN3、N2に合格するためにはどんな勉強をしたらいいのか

 

学生の日本語が上達するために、日本語教師としてできることを考えて試行錯誤の日々でした

 

学生面談は一人ひとり30分ぐらい時間をかけて、時にはもっと時間をかけて、定期的に実施しました。

 

日本に来たばかりのころ、ひらがな・カタカナを勉強していたのに、

いつの間にか日本語で冗談を言えるようになったり、日本語を使ってアルバイトができるようになったり、

学生の日本語が上達していくのを感じ、本当にやりがいを感じていました。

 

順調だと思ったけど、問題児学生が現れる

日本語ができないのに、勉強をしない学生

日本語教師として順調に行っていたと思っていたんですが、また問題が起こりました。

 

日本語が全然できない!!!いや、日本語を勉強しない!!!

という学生が現れたのです。

 

日本に来て1カ月たっても、ひらがな・カタカナが覚えられない。

だからといって、日本語を一生懸命勉強することもしない。

宿題に関しては、友達の宿題を丸写しして提出していました。

 

日本語で話ができないので、スタッフに通訳をしてもらって学生と面談をしました。

1回だけじゃなくて、しつこいぐらい何回も何回も話をしました。

面談の途中で学生が泣き出す場面もあったけど、こっちも本気です。

 

「どうして日本に留学に来たの?」「日本はただ遊ぶために来たの?」

学生の本音を聞き出して、日本語で何かをしたい!という目標があるなら、一生懸命サポートしたいと思っていました。

 

 

学生は将来日本で働きたくて、日本留学に来ました。

学生自身も日本語ができないことは自覚していました。

でも、日本に来て家族がいない寂しさから、家にいるときは何時間も家族とSkypeで話をしていて、あまり勉強をしていませんでした。

「日本語がわからない…。難しい…」と思ったら、何から手を付けていいのかわからなくて、そのままにしてしまったそうです。

 

将来日本で働きたくても、今のままでは定期試験に合格できないので、初級クラスから抜け出すことはできません。

つまり、ずっと簡単な日本語だけを学び続けることになります。

 

その学生とは、ひとまずの目標として、2か月後の定期試験合格(=N5クラス合格)を目標にしました。

 

 

何回も学生と話すうちに、学生の日本語に対する姿勢も変わってきました。

友達の宿題を丸写ししていた学生が、もう一度宿題をくださいと言ってきたのです。

 

同じクラスの他の学生よりも一歩も二歩も遅れていることは明らかでした。

クラスメイトは一生懸命に日本語が上手になりたいと頑張るその学生の姿を見て、日本語を教えたり、一緒に勉強したり、協力し始めました。

 

私もできる限りのことをサポートしようと常日頃から声をかけたり、

「日本語が話せた!」という達成感が味わえるように日本語で簡単な質問をして繰り返したり、

ミニテストを行ったり、苦手な単元をまとめたプリントを渡したりました。

 

定期試験の結果は…

そしていよいよ迎えた定期試験

 

 

2か月前には想像できないぐらい、今の学生は日本語の学習に一生懸命です。

でも、定期試験に合格できるかどうかは不安がありました。

3カ月しかない中で1カ月も遅れを取った影響は、やっぱり大きいです。

 

一番緊張しているのは学生だと思いますが、私も緊張していました。

 

あとは学生を信じるしかないです。

 

 

試験が終わって、その学生の採点をしているとき、

〇なら「よしっ!」と思い、×なら「あぁ~!!!」と思いながら、採点しました。

 

 

全部採点し終わって、〇も多いけど、×もある

微妙なライン

 

 

どっち?どっち?

 

 

最後に得点を計算すると、、、、

 

 

 

合格点ーーーーー!!!

 

 

 

彼女の努力が実りました!

すっごく嬉しかったです!!

 

 

試験結果を返却するとき、その学生は手を合わせて祈るように待っていました。

 

返却された試験結果を見た瞬間、飛び上がって喜び、涙を流しました。

クラスメイトもみんな心配していていたので、クラス全員で喜びました。

 

私も先生として本当に感動の瞬間に立ち会うことができました。

 

しかも、

その学生は後に・・・

 

なんと!

 

日本の会社に就職が決まりました!!

初級クラスに合格した後も、日本語の面では他の学生よりは少し遅れを取っていたので、

彼女の目標である「日本で働く」のは難しいかも…と思っていました。

 

ところがです。

彼女は自分で就職先を見つけてきたのです。

やる気は人一倍です。

 

卒業時に、その学生の日本語力はペラペラとはまではいきませんでした。

しかし、彼女のいいところは「元気で明るくて一生懸命なところ」です。

そんな学生のいいところを評価してくれる企業がありました。

 

今の彼女なら、卒業した後も自分で日本語の勉強を続けることができるし、

人間性を見てくれる会社に就職できてよかったと思います。

 

また、学生の夢が叶う最高の瞬間に出会えました

 

目標や夢が叶う感動ややりがいは忘れられない

日本語ができないのに勉強をしなかった学生のように、定期試験一つをとっても、学生の目標が達成したときは本当に嬉しいです。

 

学生たちは、日本語で何かができるようになりたくて、日本語を勉強しています。

大学や大学院に進学する、専門学校に行く、日本で就職する、日系企業に就職する、日本語能力試験のN2に合格する、

いろいろな目標があります。

 

もちろん、100人いれば100人全員がその目標を達成できるとは限りません。

でも、その目標や夢を叶えるために必要な日本語が上達するように、私は全力でサポートしたいし、

目標が叶った瞬間は本当に嬉しくて、本当に感動するし、本当に最高で幸せな気持ちになります!

それを一緒に味わえることに、やりがいを感じます。

 

進学や就職の合格の知らせを聞いた瞬間は、毎回本当にうれしくて、学生が大喜びしている姿を見るのが大好きです

時には、一緒に涙を流して喜びました。

 

 

この後、私自身は、体調不良や結婚も経てのライフスタイルの変化などがあり、一度日本語教師を離れることになりましたが、日本語教師として学生とかかわったときのことは、忘れられない思い出となりました。

 

あの時の学生のおかげで、やっぱり日本語教師をしたいと思って、再チャレンジした

日本語教師の職を離れて、その数年後・・・

日本語教師として再び働く自分の姿がそこにありました。

 

今度はオンラインという新しい形で挑戦することになったのですが、

一度休職をしていた日本語教師に戻ることになったのも、新人日本語教師時代のやんちゃな学生のおかげです。

 

卒業してから何年もたった後に、ふと連絡が来ました。私が日本語教師を休んでいたときです。

 

その学生は、結婚して今は日本で働いていて、少し前に赤ちゃんが生まれたことを話してくれました。

そのとき、私は日本語教師をしていなかったので、学生に今は日本語教師をしていないことを伝えました。

 

電話を切った後に、学生がメッセージをくれました。

 

先生、ありがとう。

日本語は全部先生のおかげです。

ありがとうございました。

また今度機会があれば会いましょう。

いつも優しくしてくれてありがとうございました。

 

こう書かれていました。

 

授業をしたくないからクラスから出て行ってしまうなんて、全然教師らしくない態度をとってしまった私だけど、

少しは学生のためにできたことはあったのかなと思い、本当に嬉しく感じました

この学生のおかげで、もう一度日本語教師として働きたいと思い、今に至ります。

 

このブログに対する想い

同じように悩んでいる日本語教師の方の助けになりたい

日本語教師になったばかりの頃、

 

「自分の授業はつまらないのではないか」

「聞く価値はないのではないか」

 

そう思って、教壇に立つのが怖いと思いました。

もともとなかったけど、あるように見せていた自信は一気になくなって、本気で日本語教師を辞めようと思っていました。

 

あの時の「日本語教師を辞めよう」そう思った出来事がきっかけとなって、

より学生たちのことを考えるようになり、日本語教師としてもっと成長したいと思いました。

 

 

本気で学生たちのことを考えて

学生たちに向き合って

どうすればもっと日本語が上手になるのか

どうすればもっと楽しく達成感のある授業ができるのか

 

考えて考えて、そのうちに、専任の日本語教師時代は、日本語教師になったばかりの方や新しく入った日本語教師の方の研修を担当するようになりました

 

 

しかし、ここに至るまで多くの苦労がありました。

 

日本語教師になった1年目は、夜な夜な授業準備に追われて、一睡もしないで授業に行ったこともありました。

やってもやっても終わらない仕事にパニックになってしまったこともありました。

うまく授業ができなくて、反省ばかりしていました。

若いころは学生になめられているなと感じて嫌な思いをしたこともありました。

相談できる日本語教師の方がいなくて、辛い時期もありました。

仕事に疲れて、やめていく日本語教師の同僚を何人も見てきました。

 

私自身も、一度日本語教師の職を離れました。理由は、体調を崩してしまったからです。

あんなにやりがいを感じて楽しいと思っていた仕事だけど、離れる決意をしました。

 

今はオンラインという形ですが、日本語教師に復帰して、

「やっぱり日本語教師って楽しい職業だな」

「やりがいのある職業だな」

「おばあちゃんになっても続けたいな」

と思っています。

 

 

様々な経験を経て、

昔の私と同じように日本語教師のことで悩んでいる人がいると思い、少しでも助けになりたいという想い

から、このブログを立ち上げました。

 

日本語教師をしているときに、感じていたことがあります。

それは、一人で悩んでいる日本語教師が多いということです。

 

専任の日本語教師時代は、新しく入った日本語教師の方の研修を担当していたので、様子を気にして、定期的に声掛けをしていました。

こちらから声をかけると、たくさん質問が来るんです。

忙しそうで聞きにくかったらしいので、こちらから声をかけてもらえるのを待っていたそうです。

 

実際に、私もその気持ちがわかっていたはずなのに、まだまだ寄り添えていなかったと、その話を聞いて申し訳ないと思いました。

 

そんな経緯もあって、日本語教師に復帰した今は、新しく日本語教師になって困っている人や悩んでいる人の手助けをしたいと思うようになりました。

 

私自身、まだまだ日本語教師としては勉強することはたくさんあります。

私より経験豊富で素晴らしい日本語教師の方はたくさんいらっしゃいます。

しかし、たくさん悩んだからこそ、私にも伝えられることがあると思っています。

 

日本語教師の楽しさを知って、同じようにやりがいを持って日本語教師を続けられる仲間が増えたら最高にいいと思います。

 

ですので、このブログを通じて、

特になかなか悩みを相談できる人がいなくて、困っている日本語教師の方が

「自分らしく」「のびのび」とやりがいを感じながら働けるお手伝いができましたら、嬉しいです。