日本語教師の悩み

「日本語教師をやめよう。」と思った出来事|新人の頃の体験談

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「もう日本語教師をやめよう。」

そう思った経験はありませんか?

 

日本語教師をやめたいと思う理由は人それぞれで、その時の気持ちは他の人にはわからないことかもしれません。

今回は私が日本語教師になったばかりの頃、「日本語教師をやめよう。」と本気で思った出来事をお話しします。

 

たのすけ
たのすけ
この記事を書いているのは、日本語教師のたのすけ(@t_tanosuke)です。以前は日本語学校で専任講師をしていましたが、現在はオンライン日本語教師として働いています。

 

こんな話をしていいのかなぁとも悩みましたが、

もしかしたら昔の私と同じように悩んでいる日本語教師の方がいるかもしれない

と思い、お話しすることにしました。

 

私の体験談が、何かに悩んで「日本語教師をやめよう」と思っている方のお役に立てたら幸いです。

「未熟なやつだ」と思って読んでいただければと思います。

 

【新人日本語教師時代の体験談】授業を放棄しました

まずは、どんな出来事があったのかお話しします。

あの出来事は、私が日本語教師になって、3・4か月目ぐらいだったと思います。

授業を放棄して、教室から去りました

誰もいない教室

単刀直入に言いますと、授業を放棄しました。

もっと丁寧に言うと、授業をすることをやめて授業中にクラスから出て行きました。

 

決してトイレが我慢できなかったわけではなく、もう授業をしたくなかったのです。

その場にいて、それ以上授業を続けることができなかったのです。

 

授業を放棄した原因は、、、

黒板に落書きされているのを見る教師

授業を放棄してクラスから出て行った理由は、「学生が全く授業にやる気がなかった」からです。

普段から問題の多いクラスで、他の先生方からも「授業をやりにくい」との声は上がっていました。

 

私が最初に働いていた日本語学校は、どちらかというとあまり質のいい学生が多い学校ではありませんでした。

ちょっと語弊がありますが、純粋に日本語の勉強がしたくて留学に来たわけではないような…

高校卒業後に日本留学に来た学生もいて、やんちゃなタイプが多かったです。

 

さまざまな背景を持った学生がいて、

母国では親の手に余って日本留学をさせられた学生

日本に留学すれば、日本語を勉強しながらお金が稼げると思い留学に来たという学生

もいました。

 

そんな学生は、日本語のモチベーションがもちろんあるわけもなく、

 

日本語の勉強よりもアルバイトに一生懸命。

昼間よりも時給の高い夜に工場のアルバイトをして、そのまま学校に来て授業を受ける。

アルバイト以外の時間は、携帯電話でゲームやYou Tubeを観るとこに夢中。

夜になれば、部屋に集まって飲み会ばかり。

 

もちろん、真剣に真面目に日本語の勉強をしている学生もいました。

 

家族の期待を背負って日本に来た学生

日本の大学や専門学校で学びたいことがあるという学生

日本で就職したい学生

日本語ができるようになって成功したい!と話している学生

 

日本に来たときは、目をキラキラさせて希望に満ち溢れていたように思います。

 

 

その日の授業は、

机に伏せて寝ている学生

携帯電話のゲームで遊ぶ学生

携帯電話で映画を観ている学生

友達とのメッセージのやり取りに夢中な学生

 

何回注意してもその時の返事ばかりで、全く聞く気配はありません。

 

だんだん私の中で、

怒りのような、悲しみのような、悔しさのような、複雑なドロドロした感情がこみ上げてきました

 

声を振り絞って言ったのは「もう今日の授業は終わりです」

黒板とチョーク

頭の中をいろんなことが駆け巡っています。

 

「日本語を勉強する気がない学生に授業をしても意味ない」

「授業なんてやっても無駄だ」

「そもそも、私の授業は聞く価値がないのかな…」

「何のために一生懸命授業準備をしたんだろう」

 

このときは日本語教師になって3・4か月目で新人だったので、授業準備は楽ではありませんでした。

学生たちに楽しい授業を提供したい日本語が上手になってほしいと思って、

授業準備はしっかりやっていたつもりでした。

 

 

その結果がこれ…

 

自分は何をやっているんだろう。

 

どうして日本語教師をしているんだろう。

 

何が楽しくて日本語教師をしているんだろう。

 

 

もう日本語教師をやめよう。

 

 

そう思って、

 

「もう今日の授業は終わりです」

 

 

私は静かにそう一言を言って、教室を出ました。

「絶対に泣くもんか!」と思って、声を震わせながら、そう言うのが精いっぱいでした。

 

「授業をしても意味がない」と、授業を放棄して、教務室へ帰った

沈んでいる棒人間

クラスから出た私は教務室に帰りました。

怒りというよりは、悲しいという気持ちでした。

こらえていた涙は教務室に入った瞬間、こぼれ落ちてきました。

 

 

教務室にいた先生はびっくりしていました。

そりゃ、びっくりしますよね。授業をしているはずの人が、教務室に戻ってきて、しかも涙を流しているんですから。

 

「どうしたんですか?先生」

と声をかけてくれましたが、事情を話そうと思えば思うほど、涙が出てうまく説明できません。

 

「私には無理なんだ」

「やっぱり日本語教師は向いていないんだ」

「もう日本語教師をやめよう」

「今日にでもやめることを伝えよう」

 

教務室に戻った私は、もう日本語教師をやめることばかり考えていました。

 

学生が教務室に「日本語を勉強したいです」と謝罪に来た

謝罪する棒人間

少しして、クラスの代表として学生数名が教務室に来ました。

 

「先生、ごめんさない」

 

クラスでやんちゃな学生たちです。謝罪に来たようです。

きっと私が急に教室から出て行ったので、何か感じ取ったんでしょう。

 

「私たち、日本語を勉強したいです」

 

「先生、ごめんさない」

 

 

感情のままに飛び出した私は、この後どうすればいいのかわかりません。

どうすることもできないまま、そこから動けないでいました。

 

そのうち、学生に連れられるように私は教室へ戻りました。

 

授業を放棄した理由、思いの丈をぶつける

学生に今の気持ちを伝えた

手からこぼれ落ちる水

そのとき、私は正直に自分が思っていることを伝えました。

 

日本語を勉強するつもりがないクラスで授業をしても意味がないこと

授業を受けても意味がないと思っているなら、どう授業をよくしたらいいのか教えてほしいこと

 

それから、私が一番悲しかったのは、「何のために日本に留学に来たのか」その目的を忘れてしまったことでした。

それが授業を受ける態度にも出ているのではと思ったのです。

 

学生たちは日本に来たときは、目をキラキラさせながら、

「日本はいい国です」

「今、日本にいます。とても嬉しいです」

と言っていました。

 

それが今では、日本に希望を持って留学に来たはずなのに、日本語を勉強したい意志は全く感じられません。

 

「日本語が上手になりたい」と言った気持ちは嘘だったのか?

日本に来て何をしたかったのか?

何のために日本に来たのか?

日本に留学するためのお金は、国で両親が一生懸命働いてくれたお金ではないのか?

 

 

その時の私は、冷静…ではなかったです。

 

自分の感情を表に出すことは苦手だと思っていたし、あんなに誰かに向かって、訴えるように話したことはありませんでしたが、

あの時は、感情のままに話してしまいました。

 

振り返って、よく自分に言えたなぁ…と感心?いやいや、今更ですが、穴があったら入りたいです。。。

 

こんなに熱くなってしまったのには理由があって、学生たちの事情を知っていたからです。

学生たちは、日本よりも物価の安い国から来ており、学費を払うことや日々の生活にもお金に余裕はありませんでした。

学生たちが日本に留学に来た目的は、「自分探し」ではないです。

 

家族の期待を背負って来た学生

親戚からお金を借りてまで留学に来た学生

日本語を学んで成功して家族に楽をさせてあげたいと話す学生

 

なのに、

いつの間にか楽なほうに流されてしまっています。

いろんな可能性を持っているのに、日本語を勉強する目的や可能性を忘れてしまっています

 

とにかく、とにかく、伝えました。

 

熱量に驚きながらも、学生は話を聞いてくれた

教室

急に熱くなって何言っているんだこの先生は、と思った学生もいるかもしれません。

 

でも、学生たちは、顔を上げて、目を見て、真剣に話を聞いてくれました

 

まだ、あまり日本語が上手な学生たちではありません。

私の話したことをどこまで理解できたかわかりませんが、

真剣に聞いてくれていたのは、目を見てわかりました

 

 

話を終えた後は、授業の続きをしました。

そこには、真剣に授業を聞いて、一生懸命日本語を勉強しようとしている学生たちがいました。

 

日本語教師をやめようと思ったけど、学生のおかげで続ける決意をした

ガッツポーズ

この出来事で、大学生の頃に憧れていた日本語教師になったものの、もうやめようと思いました。

 

自分には日本語教師は向いていなくて、やっぱり自分の性格には合わないのではないのか

と、日本語教師を続けたい気持ちがなくなっていました。

自分の授業は面白くないし、聞いても意味がないと思っているのではないか、

と、授業をするのが怖くなってしまい、

「もう日本語教師をやめよう。」と思っていました。

 

しかし、そのときに、学生のおかげで日本語教師を続けようと思えました。

 

後から出来事を知った他のクラスの学生が教務室に来ては、

「先生、大丈夫?」

「私先生のクラス、いつも楽しい」

「先生は本当に親切です」

「日本に来て日本語が上手になった。先生、ありがとう」

と、色々声をかけてくれました。

 

その後も、授業を放棄したクラスの学生も教務室に来ては、

「先生、私日本語の勉強頑張ります」

「絶対、成功します」

と声をかけにかけに来てくれました。

 

こんな私でも声をかけてくれる学生がいるんだと思ったら、あと少しだけ頑張ろうかなと思えました

 

受け持ったクラスの学生たちの日本語はまだまだです。

まだ日本で大学や専門学校に行けるような日本語レベルではないし、まして、日本で就職できるような日本語力はありません。

 

それから、日本語教師になって初めて担任をした学生たちの卒業はまだ先です。

学生たちは初めての授業で緊張しまくっている私を温かく迎えてくれて、緊張をほぐしてくれました。

初めての授業を終えた後に、すっごく面白かった!日本語教師になってよかった

と思わせてくれた学生たちです。

 

「絶対に卒業まで見届けたい」と思いました。

 

やめるのは簡単です。でも、きっとここで日本語教師をやめたら後悔すると思いました。

やめるのは学生が卒業した後でも遅くないと思い、

もう少しだけ日本語教師を続ける決意をしました。

 

【後日談】あの時の学生のおかげで、やっぱり日本語教師をしたいと思って、再チャレンジした

手紙

一度休職をしていた日本語教師に戻ることになったのも、この時のやんちゃな学生のおかげです。

 

卒業してから何年もたった後に、ふと連絡が来ました。私が日本語教師を休んでいたときです。

 

その学生は、結婚して今は日本で働いていて、少し前に赤ちゃんが生まれたことを話してくれました。

そのとき、私は日本語教師をしていなかったので、学生に今は日本語教師をしていないことを伝えました。

 

電話を切った後に、学生がメッセージをくれました。

 

先生、ありがとう。

日本語は全部先生のおかげです。

ありがとうございました。

また今度機会があれば会いましょう。

いつも優しくしてくれてありがとうございました。

 

こう書かれていました。

 

授業をしたくないからクラスから出て行ってしまうなんて、全然教師らしくない態度をとってしまった私だけど、

少しは学生のためにできたことはあったのかなと思い、本当に嬉しく感じました

この学生のおかげで、もう一度日本語教師として働きたいと思い、今に至ります。

 

【まとめ】「日本語教師をやめよう。」と思った出来事があったから、少し成長できた

空

日本語教師をしていて、「日本語教師をやめたい」と思ったことは、きっとほとんどの人があると思います。

私もその一人でした。

 

こんなこと話して引かれちゃうかな…とも思いましたが、私の体験が誰かの悩みや気持ちを軽くするかもしれないと思い、書きました。

 

今思い出しても、本当に未熟だったと思います。

未熟な私が少しずつですが成長し、数年後には新しく入った日本語教師の方の研修を担当するまでになりました

 

あの時は、本当に辛くて「日本語教師をもうやめよう。」と思いましたが、いろんなことを考えるきっかけになって、いい経験だったと思っています。

もしかしたら、その時に私に必要なことで、その出来事がそれを教えてくれたのかもしれません。

この出来事から私が反省したことや考えたことは「日本語教師として未熟だった私が反省した3つのことと、考えたこと」の記事に書いていますので、よかったら読んでみてください。

 

なんだかんだ日本語教師の仕事が楽しくて今も続けていますし、これからも続けていきたいなと思っています。

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日本語教師たのすけです。

恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。

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