日本語の教案

「覚えててくれた」の文法はどう説明する?「覚えてくれた」と違いは?

今回は、先日のオンラインレッスンの学習者からの質問を共有したいと思います。

恥ずかしながらパッと答えられなかったので、誰かのお役に立てばと思い、記事にしました。

たのすけ
たのすけ
この記事を書いているのは、日本語教師のたのすけ(@t_tanosuke)です。以前は日本語学校で専任講師をしていましたが、現在はオンライン日本語教師として働いています。

 

学習者が疑問に思ったのは、以下の会話部分です。

A:今日、誕生日じゃない?はい、プレゼント!

B:覚えててくれたの?嬉しい!

 

質問内容は、「『覚えててくれたの?』は、どうして「て」が2個あるんですか?『覚えてくれたの?』じゃないんですか?」でした。

 

学習者が今まで学習した文法は「Vテ形+くれる」です。

「覚えてくれる」ならわかるけど、「て」が2回続くのは、どうして?違う文法なの?と疑問に思ったようです。

 

あなたは、すぐに回答できましたか?

 

恥ずかしながら、私はパッと説明が浮かびませんでした。

意味が違うのはわかるんですが、どうやって文法的に説明すればいいのか、思いつかなかったんです。

 

もし、同じようにすぐに回答できなかったなら、ぜひこの記事を読んでみてください。

これから先、学習者から同じような質問が来たときに役に立つはずですよ。

「覚えてくれた」と「覚えててくれた」の違いを解説

「覚えてくれた」と「覚えててくれた」を文法の構造と意味の面から確認してみます。

文法の観点から解説

まずは「覚えてくれた」と「覚えててくれた」を分解します。

①覚えてくれた=覚えて+くれた⇒「覚える」のテ形+くれた

②覚えててくれた=覚えていて+くれた⇒「覚えている」のテ形+くれた

 

①は、「~てくれる」の文法なので、わかりやすいと思います。

②は、「覚えている」のテ形です。「~ている」なので、継続の意味があります。

 

②の正しい日本語は、「覚えていてくれた」になります。

話し言葉では、しばしば言葉が省略されます

学習者からの質問に回答すると、「覚えててくれた」の「い」が省略され、「覚えててくれた」になりました。

覚えててくれた
たのすけ
たのすけ
正しい形がわかれば、難しくないですね。私は省略が思いつかなかった・・・のです。

 

意味から解説

次は意味から考えてみましょう。

「覚えてくれた」は「覚えててくれた」より時間の経過が短いです。

(昨日初めて会った人と)

A:田中さん、こんにちは!

B:こんにちは!昨日初めて会ったのに、もう名前を覚えてくれたんですか。ありがとうございます。

 

「覚えててくれた」は時間の経過が長いです。(「~ている」の意味が継続のため)

A:今日、誕生日じゃない?はい、プレゼント!

B:(何カ月も前に話しただけなのに)覚えててくれたの?嬉しい!

たのすけ
たのすけ
前に話したことを今も「覚えている」ときに、「覚えててくれた」という言い方をします。

 

【まとめ】話し言葉では、省略される場合がある

日本語は話すとき、しばしば言葉が省略されます

例えば、「電話をしています」は、話すとき「電話(を)して(い)ます」になる場合もあります。

たのすけ
たのすけ
会話ではしばしば言葉が省略されると覚えておけば、同じような質問が来た時に、回答を導くのに役立ちます。

 

今回の学習者の質問回答をまとめます。

「覚えてくれた」と「覚えててくれた」は意味が異なる。

「覚えててくれた」の正しい形は、「覚えていてくれた」。

話し言葉では、ときどき省略される言葉がある。

「い」が省略され、「覚えててくれた」になった。

 

レッスンをしていると、想定していない質問やすぐに答えられないような質問が来ます。

その時は慌てないで、「次回のレッスンで説明します」と対応していいと思います。

経験が増えると、自分の中の引き出しが多くなって、学習者からの質問に答えられるようになります。

今回も勉強になりました。

 

以上、たのすけでした。

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