日本語の教案

「~たり~たり」を教えるときの5つ注意点|日本語文法の基礎知識 

学習者に「夏休み、何をしますか?」と聞いたら、

「夏休みは友達と遊んだり、コーヒーを飲んだりします」

と言いました。

 

この文は、学習者が「~たり~たり」の文法を正しく理解していないために、間違った使い方をしています。

どこをどう直したらいいのでしょうか?

 

たのすけ
たのすけ
この記事を書いているのは、日本語教師のたのすけ(@t_tanosuke)です。以前は日本語学校で専任講師をしていましたが、現在はオンライン日本語教師として働いています。

 

「~たり~たり」の文法は、簡単なようで意外に奥が深い文法です・・・!

 

学習者に注意点を伝えるだけで、初めに紹介したような誤用がなくなると思いますので、

「どこをどう直したらいいのか、わからない」

「「~たり~たり」を教えるときの注意点を知りたい」

のなら、ぜひこの記事を読んでみてください。

 

「~たり~たり」の用法|意味と接続

「~たり~たり」には、意味がいくつかあります。

  • 例示・並列
  • 繰り返し

どちらも接続は、動詞のタ形です。

 

例示・並列

たくさんある動作の中から、いくつかをピックアップして例を言うときに使います。

  • 昨日は顔を洗ったり、お風呂に入ったりしました
  • 先週の日曜日は、デパートで映画を見たり買い物したりしました
  • アルバイトでは、料理を作ったり、お皿を洗ったりします

 

「~たり~たり」を使うと、それだけじゃなくて他のこともする、と表すことができます

最初の例文なら、先週の日曜日は、「デパートで映画を見た」ことと、「買い物した」こと以外のこともしたよ、というのを暗示できます。

 

繰り返し

反対の言葉を並べて、動作や状態の繰り返しを言う時に使います。

昨日は休みだったので、一日中テレビを見たり、ゲームをしたりしていた

 

繰り返しの意味で使うときは、動詞だけじゃなく、形容詞も接続できます

最近の天気は暑かったり寒かったりします

 

「~たり~たり」の5の注意点

たのすけ
たのすけ
初級で勉強する「例示・並列」の意味について、注意点を紹介します!

同じグループでなければならない

「~たり~たり」は、同じグループでないと使えません。

  1. 夏休みは海で泳いだり、山に登ったりしました。〇
  2. 夏休みは海で泳いだり、コーヒーを飲んだりしました。×

 

夏休みにしたことを並べて、その中からいくつかピックアップするので、

①は同じ夏休みにした遊びのグループからピックアップしているのでいいですが、②は「海で泳ぐ」と「コーヒーを飲む」が同じグループとは言えないので、×になります。

たのすけ
たのすけ
冒頭で紹介した例文は、この間違いですね。

 

誰もがすることには使えない

「~たり~たり」は、たくさんある動作の中から、いくつかピックアップして言うときに使うと紹介しました。

なので、誰もがするようなこと(習慣など)は取り立ててピックアップする必要がないので、使えません。

昨日は顔を洗ったり、お風呂に入ったりしました

 

「顔を洗う」「お風呂に入る」は誰もがするような習慣なので、使えません。

 

時制は文末で決まる

「~たり~たり」が現在形なのか過去形なのかは、文末で決まります。

  • わからないとき、友達に聞いたり、インターネットで調べたりします
  • 昨日の午後、図書館へ行ったり、郵便局へ行ったりしました
たのすけ
たのすけ
日本語の時制は、文末で決まります。

 

また、「~たり~たり」には、いろんな文末が取れます。

  • 図書館で、食べ物を食べたり飲んだりしてはいけません
  • テストのとき、話したり、後ろを見たりしないでください
  • 夏休み、海へ行ったり、山に登ったりしたいです
  • 子供たちは本を読んだり、ゲームをしたりしています
たのすけ
たのすけ
練習をするときは、「~たり~たりする」だけでなく、いろんな文末で練習したいですね。話せるバリエーションが広がります。

 

「~たり~たり」をたくさん使わない方がいい

「~たり~たり」を使うのは、多くても3つまでがいいです。

「~たり~たり」はたくさんある動作からピックアップするときに使うのに、「~たり~たり」でたくさん述べては意味がありません。

  • 日本語の授業では、言葉を勉強したり、文法を勉強したり、会話を練習したり、作文を書いたり、スピーチをしたりします。×
  • 日本語の授業では、文法を勉強したり、会話を練習したります。〇
たのすけ
たのすけ
たくさん言うのは大変なので、「~たり~たり」を使いましょう。

 

「~たり~たりする」の2回目の「~たりする」を忘れない

「~たり~たり」の文法では、2回目の「する」を忘れやすいです。

  • 昨日はテストの勉強をしたり、宿題をしました。×
  • 昨日はテストの勉強をしたり、宿題をしたりしました。〇
たのすけ
たのすけ
学習者の作文をチェックすると、この間違えが多いです。

 

補足①:「~たり」が一つのときもある

「~たり」が一つしかない場合もあります。

先週、遊園地へ行ったりしました

「~たり」が一つしかなくても、例示・並列の意味で、「~たり」を使うことで、他にもあると伝えることができます

 

補足②:「~たり」だけで、婉曲表現として使う

「~たり」を一つだけで使い、婉曲表現として使うことが多いです

この2つの例文を比べてみてください。

  • 時間に遅れないでください。
  • 時間に遅れたりしないでください。

 

2つの例文を比べると、「~たり」を使った方が、ちょっと遠慮がちな遠回しな言い方だと感じませんか?

たのすけ
たのすけ
たのすけは、婉曲表現として「たり」をよく使っています。

 

【まとめ】注意点に気を付ければ、難しくない!

例示・並列「~たり~たり」の文法の注意点を5つ紹介しました。

もう一度まとめます。

  • 同じグループでなければならない。(例)夏休みは友達と遊んだり、コーヒーを飲んだりしました。×
  • 誰もがすることには使えない。(例)昨日は顔を洗ったり、お風呂に入ったりしました。
  • 時制は文末で決まる。
  • 「~たり~たり」を使うのは、2つ・3つまでがいい。
  • 2回目の「~たりする」を忘れない。(例)昨日はテストの勉強をしたり、宿題をしました。×

 

文法を教えるときに、注意点を伝えるだけで、学習者の誤用は少なくなります

簡単に思える文法こそ、実は注意点があって、間違えやすかったりします。

「~たり~たり」を教えるときは、今回紹介した5つの注意点も一緒に教えてあげてくださいね。

 

以上、たのすけでした。

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