学習者に「夏休み、何をしますか?」と聞いたら、
「夏休みは友達と遊んだり、コーヒーを飲んだりします」
と言いました。
この文は、学習者が「~たり~たり」の文法を正しく理解していないために、間違った使い方をしています。
どこをどう直したらいいのでしょうか?
「~たり~たり」の文法は、簡単なようで意外に奥が深い文法です・・・!
学習者に注意点を伝えるだけで、初めに紹介したような誤用がなくなると思いますので、
「どこをどう直したらいいのか、わからない」
「「~たり~たり」を教えるときの注意点を知りたい」
のなら、ぜひこの記事を読んでみてください。
目次
「~たり~たり」の用法|意味と接続
「~たり~たり」には、意味がいくつかあります。
どちらも接続は、動詞のタ形です。
例示・並列
たくさんある動作の中から、いくつかをピックアップして例を言うときに使います。
- 昨日は顔を洗ったり、お風呂に入ったりしました。
- 先週の日曜日は、デパートで映画を見たり、買い物したりしました。
- アルバイトでは、料理を作ったり、お皿を洗ったりします。
「~たり~たり」を使うと、それだけじゃなくて他のこともする、と表すことができます。
最初の例文なら、先週の日曜日は、「デパートで映画を見た」ことと、「買い物した」こと以外のこともしたよ、というのを暗示できます。
繰り返し
反対の言葉を並べて、動作や状態の繰り返しを言う時に使います。
昨日は休みだったので、一日中テレビを見たり、ゲームをしたりしていた。
繰り返しの意味で使うときは、動詞だけじゃなく、形容詞も接続できます。
最近の天気は暑かったり、寒かったりします。
「~たり~たり」の5の注意点
同じグループでなければならない
「~たり~たり」は、同じグループでないと使えません。
- 夏休みは海で泳いだり、山に登ったりしました。〇
- 夏休みは海で泳いだり、コーヒーを飲んだりしました。×
夏休みにしたことを並べて、その中からいくつかピックアップするので、
①は同じ夏休みにした遊びのグループからピックアップしているのでいいですが、②は「海で泳ぐ」と「コーヒーを飲む」が同じグループとは言えないので、×になります。
誰もがすることには使えない
「~たり~たり」は、たくさんある動作の中から、いくつかピックアップして言うときに使うと紹介しました。
なので、誰もがするようなこと(習慣など)は取り立ててピックアップする必要がないので、使えません。
昨日は顔を洗ったり、お風呂に入ったりしました。
「顔を洗う」「お風呂に入る」は誰もがするような習慣なので、使えません。
時制は文末で決まる
「~たり~たり」が現在形なのか過去形なのかは、文末で決まります。
- わからないとき、友達に聞いたり、インターネットで調べたりします。
- 昨日の午後、図書館へ行ったり、郵便局へ行ったりしました。
また、「~たり~たり」には、いろんな文末が取れます。
- 図書館で、食べ物を食べたり、飲んだりしてはいけません。
- テストのとき、話したり、後ろを見たりしないでください。
- 夏休み、海へ行ったり、山に登ったりしたいです。
- 子供たちは本を読んだり、ゲームをしたりしています。
「~たり~たり」をたくさん使わない方がいい
「~たり~たり」を使うのは、多くても3つまでがいいです。
「~たり~たり」はたくさんある動作からピックアップするときに使うのに、「~たり~たり」でたくさん述べては意味がありません。
- 日本語の授業では、言葉を勉強したり、文法を勉強したり、会話を練習したり、作文を書いたり、スピーチをしたりします。×
- 日本語の授業では、文法を勉強したり、会話を練習したります。〇
「~たり~たりする」の2回目の「~たりする」を忘れない
「~たり~たり」の文法では、2回目の「する」を忘れやすいです。
- 昨日はテストの勉強をしたり、宿題をしました。×
- 昨日はテストの勉強をしたり、宿題をしたりしました。〇
補足①:「~たり」が一つのときもある
「~たり」が一つしかない場合もあります。
先週、遊園地へ行ったりしました。
「~たり」が一つしかなくても、例示・並列の意味で、「~たり」を使うことで、他にもあると伝えることができます。
補足②:「~たり」だけで、婉曲表現として使う
「~たり」を一つだけで使い、婉曲表現として使うことが多いです。
この2つの例文を比べてみてください。
- 時間に遅れないでください。
- 時間に遅れたりしないでください。
2つの例文を比べると、「~たり」を使った方が、ちょっと遠慮がちな遠回しな言い方だと感じませんか?
【まとめ】注意点に気を付ければ、難しくない!
例示・並列「~たり~たり」の文法の注意点を5つ紹介しました。
もう一度まとめます。
- 同じグループでなければならない。(例)夏休みは友達と遊んだり、コーヒーを飲んだりしました。×
- 誰もがすることには使えない。(例)昨日は顔を洗ったり、お風呂に入ったりしました。
- 時制は文末で決まる。
- 「~たり~たり」を使うのは、2つ・3つまでがいい。
- 2回目の「~たりする」を忘れない。(例)昨日はテストの勉強をしたり、宿題をしました。×
文法を教えるときに、注意点を伝えるだけで、学習者の誤用は少なくなります。
簡単に思える文法こそ、実は注意点があって、間違えやすかったりします。
「~たり~たり」を教えるときは、今回紹介した5つの注意点も一緒に教えてあげてくださいね。
以上、たのすけでした。
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。