日本語教師の方、授業で学習者が間違ったらどうやってフィードバックしていますか?
学生の誤用の訂正方法がわからないくて、困っていませんか?
私は日本語教師になったばかりの頃、学生の誤用をどのように訂正してフィードバックをすればいいのか、よくわかりませんでした。
今では、学生の誤用があったら、「これでまた日本語が上手になるぞ!」と思っています。心の中は、しめしめです^^
この記事は、「誤用の原因」と「学生が誤用をしたときのフィードバック方法」を紹介しています。
この記事を読めば、以下の疑問が解決します。
誤用は教師にとって「宝の山」です。ぜひ、誤用を学生の日本語力向上につなげてみてください。
目次
誤用について
誤用はないほうがいいの?
誤用はないほうがいいと思いますか?
「間違えるのは悪いこと」だと思っていませんか?
言語を覚えるときに、誤用はつきものです。誤用をして、だんだん正しく言葉が使えるようになるのです。
学生の誤用は、教師にとっても貴重なものです。
なぜなら、どのような間違いをしたかで、学生の日本語レベル・理解度を知る手掛かりになるからです。
「誤用」は恥ずかしいものではなく、学生にとっても教師にとっても「宝の山」です。
ただし、誤用なので、フィードバックをして訂正する必要があります。
訂正が必要な場合、教師は次のことを考えなければなりません。
誤用の原因は何?
どうして間違えてしまうのでしょうか。誤用の原因を3つにわけました。
では、詳しく説明していきます!
1.母語の影響
母語の影響とは、学生の母語(自分の国の言葉)が影響して間違えてしまうことです。
例えば、迷惑受身という言い方は英語にはありません。
日本語では、「私」を中心にするので、「私はケーキを妹に食べられました」という言い方になります。(「食べられました」の部分を日本語で迷惑受身と言います)
それを英語に直訳すると、「私のケーキは妹に食べられました」となります。
✕私のケーキは妹に食べられました。
〇私はケーキを妹に食べられました。
英語を母語とする学習者は、「私は~」という言い方をしません。
そのため、迷惑受身を理解するのが難しく、よく間違えてしまうのです。
これが、母語の影響です。
2.誤ったルール形成
誤ったルール形成とは、言語を習得する過程で、誤ったルールを作ってしまうことです。
1つの文法ルールを他にも当てはめたり、見たり聞いたりする中で、自分で勝手にルールを作ってしまいます。
例えば、「寒いのとき」という間違いです。
「とき」の前が名詞のときは、「学生のとき」など、「の」がありますが、同じルールを形容詞にも当てはめてしまった間違いです。
〇寒いとき
✕寒いのとき
3.たまたま言い間違える
たまたま言い間違えてしまう場合があります。どんなときかというと、
- 短時間でうまく言語を処理できない。
- 十分に注意をできていない。
- ルールや表現などを理解していてもはっきり覚えていない。
- 言語知識が自動化されていない。(知識があっても、間違えてしまう)
たまたま言い間違えてしまったかどうかを判断するのは、学生が自分で間違いを訂正できるかどうかで判断できます。
自分で誤用を訂正できないときは、文法の理解が足りていません。
自分で訂正できれば、意識しないでも使えるように練習が必要です。
(意識しないでも使えるようにすることを「言語知識の自動化」といいます)
言い間違えてしまった場合でも、掘り下げていくと原因はそれぞれ違いますよね。
私たち教師は、学生の言い間違えの原因によって、学生の日本語レベル・理解度を知ることができます。
つまり、誤用によって、今現在、日本語を習得するまでの「どの段階」にいるのかを知る手掛かりになります。
重大な誤用はある?それは何?
誤用にもレベルがあります。あまり重要ではない誤用から、相手に誤解を与えてしまう誤用です。
文法が完全に間違っている場合もあれば、文法が正しくても日本人が使わない言い方をしている場合もあります。
判断基準は、その間違いがコミュニケーションにおいて「間違えても問題がないものなのか」「間違えると意味が違ってしまうものなのか」です。
間違えても問題のない誤用
助詞「を」を「に」と言ってしまった誤用です。
私は友達に待っています。(正解:を)
これぐらいの誤用なら、聞き手も間違いだとも気づくし、誤解を招くような誤用ではありません。
間違えると意味が違ってしまう誤用=重大な誤用
間違えると意味が違ってしまう誤用は、重大な誤用です。
理由は、聞き手が話し手の意図と違う解釈をし、誤解が生まれてしまうからです。
友達がわざわざ薬を買って来ました。(正解:買って来てくれました)
「買って来ました」だと、嫌な気持ちなのかな?と誤解を与えかねません。
「~てくれる」の文法を正しく使えないと、感謝の気持ちが相手に伝わらないので、重大な誤用です。
A:ここでたばこを吸ってはいけません。
B:そうですね。(正解:そうですか)
「そうですね」と答えると、もともとダメなことがわかっていたのに、たばこを吸っている印象になります。
これも相手に誤解を与えてしまう重大な誤用です。
間違えると誤解が生まれてしまう誤用は、学生のためにもフィードバックして訂正する必要があります。
【誤用の訂正の仕方】どうやってフィードバックすればいい?
誤用を訂正することで、日本語はどんどん上手になります。誤用があったら、学生にフィードバックしましょう。
フィードバックのポイントは3つあります。
では、詳しく説明していきます。
1.誤用をした学習者自身に訂正してもらう
誤用を訂正する人は、3通りあります。
- 誤用をした学習者
- その他の学習者
- 教師
誰が誤用を訂正してもいいですが、学習者自身に間違いを気づかせて誤用を訂正するのがいいです。
なぜなら、自分で考えることで、一度間違えたところを意識するようになるからです。
学生が間違えたときは、ついつい教師が誤用を訂正してしまいがちですよね。
しかし、いつも教師が訂正していたのでは学習者に実力が身に付きません。
教師の役割は、それが正しい日本語ではないと伝えることです。
誤用をした学生にどこが間違えだったのか考えてもらいましょう!
2.誤用をした直後に訂正する
誤用を訂正するタイミングは2通りあります。
- 誤用をした直後
- 活動の後
効果的なのは、誤用をした直後に訂正するやり方です。
なぜなら、後から誤用だと伝えても、自分がどう間違えたかを忘れているからです。
学生が間違えた直後に誤用を訂正するやり方を紹介します。
学生:昨日の夜、日本語を勉強します。
教師:昨日の夜、日本語を勉強します?昨日?勉強します?
学生が間違えた直後に、教師は学生が自分の誤用に気づくように促しています。
誤用があった場合はすぐ訂正したほうがいいですが、すぐに訂正しないほうがいい場合もあります。
それは、ロールプレイやスピーチ、発表などの活動をしているときです。
途中でいちいち誤用をフィードバックしていたら、流れを中断してしまうし、なかなか授業も進みません。
ロールプレイなどの活動のときは、終わってからまとめてフィードバックをしたほうがいいです。
活動はやりっぱなしではなく、必ずフィードバックの時間を設けて、誤用を訂正したり振り返る時間を取りましょう。
授業中にフィードバックの時間が取れない場合は、授業後に誤用についてのメモを渡してもいいです。
3.場面や状況に合わせて訂正方法を変える
誤用の訂正の仕方はいろいろあります。
その時々に合った、一番いい方法で訂正しましょう。
詳しく説明します。
留学生の友達が電話をかけようとして、「あれっ、携帯電話はない!」と言いました。
上の状況のとき、9つのフィードバックの仕方が考えられます。
- 「それは、間違っていますよ」とはっきり誤用であることを伝える。
- 「携帯電話がないが正しい言い方ですよ」と正しい言い方を伝える。
- 「助詞が間違っていますよ」と文法用語を使って、誤用であることを伝える。
- 「携帯電話…」と誤用の直前で止める。
- 「携帯電話はない?」と相手の誤用を繰り返す。
- 「すみません。よくわからなかったので、もう一度言ってください」と理解できなかったことを伝え、もう一度言ってもらう。
- 「発見したときは、携帯電話はないじゃなくて、携帯電話がないと言います」と、なぜ間違いなのかを正しい言い方と一緒に伝える。
- 「ああ、携帯電話がないんですね」と、正しい言い方を相づちのように自然に返す。
- その場では言わずに、後でメモに書いて渡す。
どのフィードバックの方法をとってもいいのですが、言語習得のメカニズムから、効果的だと考えられているのは⑧の方法です。
これは「リキャスト」と呼ばれ、自然な形で学習者の発話を繰り返す方法です。
リキャストは、子供が母語を習得していくのと同じ過程です。
一番いいフィードバックの方法は?
フィードバック方法を伝えましたが、絶対にこれがいい!というやり方はありません。
間違え方や、その場の状況、学生の性格なども考えて、フィードバックをするのがいいです。
誤用を全部直してほしい学生もいれば、人前で間違えを指摘してほしくない学生もいますからね。
一番よくないのは、誤用をそのままにしておくことです。
これだと、いつまで経っても日本語が上達しませんよね。
【まとめ】誤用をフィードバックすることで、日本語が上手になる!
誤用は、言語を覚えようとしているなら必ず起こるもので、「宝の山」です。
間違えるのが恥ずかしいから日本語を話さないという学生もいますが、本当にもったいないです。
教師は、学生が間違ってもいいから話せるような雰囲気作りをしましょう。
「誤用は日本語が上手になるために必要なもの。今間違えたので、次はもう間違えないから大丈夫。間違えてラッキーだね」という感じです。
以上、たのすけでした。
日本語教師のまとめ記事はこちら
≫日本語教師になりたい方向けのまとめ記事
≫授業のやり方や教え方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
≫【完全保存版】日本語授業のやり方や教え方がわかるまとめ記事
≫働き方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。