学習者から
「先生、「~てほしい」と「~てください」は何が違いますか?同じでいいですか?」
と質問されたら、あなたはどう答えますか?
「~てください」は初級の前半で学習する文法ですし、「~てほしい」も「Nがほしい」は初級前半で学習しており、その動詞バージョンなので、あまり難しくはありません。
ですが、似たような意味だと、学習者はその違いについて疑問に思います・・・!
この記事では、「~てほしい」と「~てください」の違いについて、3つのポイントを紹介しています。
冒頭の学習者の質問に「何て答えよう…」と思ったのなら、ぜひこの記事を読んでみてください。
目次
「~てほしい」の用法
まず、「~てほしい」の用法について確認します。
意味
相手に「~すること(~しないこと)」を望む気持ちを表します。
接続
Vテ形/ナイ形+ほしい
補足
否定の形は、「~てほしくない」の形もあります。
「~てほしい」の否定形は「~ないでほしい」の形がほとんどで、「日本語文型辞典」にだけ「~てほしくない」との違いが載ってたので、紹介します。
意味は、①自分の望むことが聞き手に関係ないときや、②聞き手のとった行動を非難するときに使います。
①子供にわがままな人になってほしくない。
②A:やっぱり私たちが悪かったんじゃない?謝りに行かない? B:わかっているけど・・・そんなこと言ってほしくない!
②の意味を、「~ないでほしい」と「~てほしくない」でどんな違いがあるのか比べてみると、
「~ないでほしい」は、自分や相手のためを思ってのお願いで、「~てほしくない」は、相手がした行動に対してお願いをするのではなく非難をする、という違いがあります。
それを踏まえて、例文で意味を比べてみます。
- 健康のために、たばこを吸わないでほしい。→たばこは健康に悪いから、健康のためにも、たばこを吸わないでください、お願いします。
- 健康のために、たばこを吸ってほしくない。→たばこは健康に悪いの知っていますよね?なのに、どうしてたばこを吸うんですか?
例文
- 一生懸命勉強しているので、みんなにN3に合格してほしい。
- 忙しい・・・!誰かに手伝ってほしい。
- 彼にプロポーズしてほしいと思っている。
- 明日は晴れてほしい。
- おばあちゃんに早く元気になってほしい。
- 休みの日に、仕事の話をしないでほしい。
- 夏休みが終わらないでほしい。
「~てほしい」と「~てください」の3つの違い
それでは、「~てほしい」と「~てください」の違いについて、3つの違いを見ていきましょう。
心の中で願うときは「~てほしい」を使う
相手に直接お願いをするときは、「~てほしい」「~てください」のどちらも使えますが、
心の中で願うときは「~てほしい」しか使えません。
(心の中で)彼に私を好きになって(〇ほしい ×ください)。
(心の中で)あー、わからない。田中さんに教えて(〇ほしい ×ください)。
対象が人じゃないときは「~てほしい」を使う
対象が人じゃないときは、「~てください」は使えません。
明日は晴れて(○ほしい ×ください)。
対象が人のときは「Nに」ですが、人じゃないときは「Nが」になります。
2カ月も雨が降っていないので、雨(×に 〇が)降ってほしい。
早く夏休み(×に 〇が)来てほしい。
状態・事態の変化を望むときは「~てほしい」を使う
行動ではなく、状態や事態の変化を望むときは、「~てください」は使えません。
母の病気が早くよくなって(〇ほしい ×ください)。
学習者にどうやって説明する?
冒頭の学習者の質問への回答ですが、初級の学習者なら、
- 「~てほしい」と「~てください」は同じで使ってOK
- 違いは、心の中で願うときや、お願いする相手が人じゃないときは「~てほしい」を使う
という説明でいいと思います。
状態・事態の変化を望むときも「~てほしい」を使いますが、これは学習者のレベルによって理解できそうなら説明する、ぐらいでいいと思っています。
【まとめ】「~てほしい」と「~てください」は置き換えOKだが、できないときもある!
「~てほしい」と「~てください」の違いについて説明しました。
基本的には、「~てほしい」と「~てください」の二つは置き換えOKです。
違いについて、もう一度まとめます。
「~てほしい」の方が使える範囲が広いので、「~てほしい」しか使えない場合を紹介すします。
☞「~てほしい」しか使えない場合
- 心の中で願うとき。 (例)(心の中で)彼に私を好きになって(〇ほしい ×ください)。
- 対象が人じゃないとき。 (例)明日は晴れて(○ほしい ×ください)。
- 状態・事態の変化を望むとき。 (例)母の病気が早くよくなって(〇ほしい ×ください)。
「~てほしい」と「~てください」は、意味的には学習者にとって難しくないですが、その違いについて聞かれることがあります。
ぜひ把握しておいていただければと思います。
以上、たのすけでした。
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。