「教案をチェックしてもらったら、未習語彙を使ってはダメと言われた…」
「語彙のコントロールは絶対にしなきゃダメ?」
そんな悩みや疑問を持っていませんか?
日本語教師になったばかりの方で、語彙のコントロールをどのように考えればいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
この記事では、日本語授業における「語彙のコントロール」についての考えを述べています。
これはあくまで、私個人の経験による考えですので、その点はご了承ください^^
目次
日本語授業における「語彙のコントロール」について
語彙のコントロールとは?
語彙のコントロールとは、学習者が学習した語彙を使って話すことを言います。
経験を積めば積むほど、何課でどの語彙を学習するかが頭の中に入るので、授業に合わせた語彙で話ができるようになります。
語彙のコントロール以外にも、文型をコントロールすることを「文型のコントロール」と言います。
語彙のコントロールは、なぜ必要なの?
日本語教師養成講座では、「語彙のコントロールは必要!!」と教わりませんでしたか?
私自身、日本語教師養成講座で教案を作るときや新人日本語教師時代は、未習語彙について先輩から口酸っぱく言われた経験があります。
では、語彙のコントロールは、なぜ必要なのでしょうか?
語彙のコントロールが必要だと言われる理由は、日本語学校では直説法と言って、日本語で日本語を教えるからです。
学習者が日本語を聞いて理解できるようにしなければならないので、学習した語彙だけを使って話す語彙のコントロールが必要になります。
語彙のコントロールをするメリット
日本語を直説法で教える場合は、語彙をコントロールすることによって、初級の学生でも日本語で日本語を学べるメリットがあります。
例えば、教師が未習語彙を言ったとすると、知らない言葉があっただけで、文全体の意味がわからなくなってしまったり、知らない言葉が気になって他の学習者に聞いたりして、ザワザワしてしまうかもしれません。
語彙のコントロールをすれば、そういったことは起きにくいです。
語彙のコントロールをするデメリット
語彙のコントロールをするデメリットは、学習者がクラスで使う日本語と外で使う日本語にギャップを感じてしまうことです。
特に初級の授業をする場合は、語彙のコントロールをして、さらにはティーチャートークで話します。
ティーチャートークとは、学習者が理解しやすいように、ゆっくりはっきり話すことです。
実際に学習者から言われたことがあります。
「先生の授業はよくわかる。クラスでは日本語も聞き取れるし、日本語が上手になったと思う。でも、アルバイト先で日本人と話すと、何を話しているかよくわからない。難しい」
学習者のこの言葉からわかることは、クラスで話す日本語とリアルの日本語は違うということです。
日本語教師は、学習者が理解できるように既習の語彙と文型を使い、ゆっくりはっきり話します。
しかし、それが学習者が一歩外へ出たときに、「あれ…日本語がわからない…」と感じて、ギャップが生まれる原因になります。
語彙のコントロールをすると、そういったデメリットがあるのは、知っておいたほうがいいと思います。
日本語授業における「語彙のコントロール」についての考え方
語彙のコントロールはある程度でOK
私の考えは、語彙のコントロールはしたほうがいいけど、しなくてもいい!という考えです。
中途半端な意見ですね。初級と中級に分けて、詳しく説明します。
初級なら、できるだけ語彙のコントロールをしたほうがいい
直説法で教えるなら、初級のときは語彙のコントロールが必要だと思います。
しかし、頑なに「まだ学習していないから使ってはダメ!」と制限する必要はないです。
教科書に出てこなくも、必要だったらそのときに新しい語彙を紹介したほうがいいし、もっと自然に使っている言葉があれば、そっちを紹介したほうが学習者のためになることもあります。
だから、絶対に既習語彙しか使ってはいけない…と思わずに、その時に必要なら未習語彙でも使っていいという考えです。
「語彙のコントロール=未収語彙は禁止」ではありません。
未習語彙でもイラストや写真があればわかるし、実際に動作をすること説明できる動詞もあります。
私の経験を話すと、日本語学校勤務時代は新人日本語教師の方の教案をチェックしていたので、未習語彙があるかどうかのチェックはしていました。
それは、絶対使ってはダメ!というわけではなく、その課では未習語彙であることを知っておいてほしいからでした。
教師が未習語彙であることを知らないで使うのと、未習語彙だと知っていて「未習だけど取り入れたほうがいい」と思って使うのとでは、違いますよね。
未習語彙かどうか知っていれば、その選択ができます。
文型を導入するときや導入文に関しては、未習語彙は使わないほうがいいと思います。
なぜなら、新しい文型を学習するのに、知らない言葉を使ってしまうと、理解がより難しくなるからです。
中級なら、あまり語彙のコントロールは気にしない!
中級になったら、あまり語彙のコントロールは気にしなくていいと思います。
「自然な日本語ならどう言うか」を基準に考えて、必要なら新しい語彙をどんどん取り入れていっていいと思っています。
なぜなら、中級レベルになれば、語彙の説明をしても理解できるだけの日本語力があるからです。
(もちろん、N3レベルになったばかりの学習者とN1レベルの学習者では語彙力に差があるので、考慮はします)
学習者が日本語を学んでいる理由は、日本人とコミュニケーションを取りたい、仕事で必要だから、アニメを字幕なしで観たい!など様々です。
クラスと外を繋げるようにするのが日本語教師の役目だと思うので、より自然な日本語ならどう言うのかを基準に考え、「この言葉を使ったほうが自然だよ」「それは日本語でこう言うんだよ」と伝えたほうがいいです。
実際に日本人とコミュニケーションをしていると、会話の中で知らない言葉はたくさん出てきます。
文脈から言葉の意味を推測することも必要になってくるので、「慣れ」という観点で見ても、中級以上は語彙のコントロールを気にしないでいいと思います。
【注意点】新しい語彙ばかりにならないように、気を付けよう
授業をする上で気を付けたいことは、未習語彙ばかりを使わないようにすることです。
必要だからと思っても、未習語彙ばかりだと学習者は覚えるのが大変ですし、語彙の授業になってしまいますからね。
【まとめ】語彙のコントロールはした方がいいけど、必要なら未習語彙を使ってよい!
語彙のコントロールについて、見解をまとめます。
初級:できるだけ語彙のコントロールをしたほうがいいけど、必要なら未習語彙は使ってもOK。
中級:語彙のコントロールはあまり気にしない。「自然な日本語ならどう言うか」を基準に考えて、どんどん新しい語彙を使ってOK。
「未習語彙は使ってもいいんだ」と気楽に考えましょう。
初級に関しては、未習語彙であると理解した上で使うのが一番いいと思います。
実際は、経験を積めば積むほど、「何課でこの語彙を学習する」「この語彙はN3の語彙だ」という風に語彙のコントロールはできるようになってきますので、語彙のコントロールができない…と悩まなくても大丈夫ですよ!!
補足になりますが、初級のうちは文型コントロールはしたほうがいいと思っています。
理由は、語彙の説明はイラストや写真、動詞であれば動作をして説明できますが、文型は簡単に説明できないからです。
初級のうちは、混乱を防ぐためにも文型コントロールは意識して話しましょう。
ただし、文型コントロールをしすぎて、あまりにも不自然な日本語を話してしまわないように気をつけましょうね。
絶対こんな日本語使わないよ!というぐらいなら、文型のコントロールもしなくていいと思っています。
以上、たのすけでした。
日本語教師のまとめ記事はこちら
≫日本語教師になりたい方向けのまとめ記事
≫授業のやり方や教え方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
≫【完全保存版】日本語授業のやり方や教え方がわかるまとめ記事
≫働き方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。