「中上級ってどんな教え方をすればいいの?」
「初級と何が違うの?」
と、不安に思っていませんか?
日本語教師になったばかりの頃は、初級の授業でも大変ですよね。
初級にも慣れてくると、次は中級以上のクラスを教えることになります。
実際に、私も日本語教師になったばかりの頃は、中級以上なんて教えられないと思っていました。
食わず嫌いみたいに、漠然と中級以上を教えるのはできそうにないと思っていたんです。
しかし、初級しか教えられないのでは、日本語教師の幅が広がりませんよね。
この記事では、「中級」「上級」とはどのようなレベルなのか、中上級を教えるときの4つのポイント、授業で気を付けたいポイント2つを紹介しています。
この記事を読めば、以下の疑問が解決します。
「初級が教えられるようになったから、次は中級も教えられるようになりたい」
と思っているなら、ぜひこの記事を読んでみてください。
「中級文法」の教え方については、「【実際の導入例を紹介】日本語「中級文法」の教え方と5つのポイント」の記事で具体的に解説しています。
(この記事は、国際交流基金が出している日本語教授法シリーズ「中・上級を教える」という本を参考にして書いています)
目次
日本語「中級」「上級」のレベルとは
まずは、中級と上級のレベルについて知りましょう。
国際交流基金が出している『中・上級を教える』という本では、中級と上級のレベルを次のように設定しています。
中級のレベル
身近な話題だけでなく、一般的な話題について、聞いたり話したり、やり取りをしたり、読んだり書いたりすることができるレベル。やや複雑な構文を含むまとまりのある文章や発話などを理解したり産出したりできる。やや複雑な課題にも対応でき、連続したやり取りや、相手に配慮したコミュニケーションもできる。
参照:国際交流基金 日本語教授法シリーズ 第10巻「中・上級を教える」
初級では、身近な話題についてしか話せませんでしたが、中級になると話題がぐっと広がって、一般的な話題についても話せるようになります。
また、単語や短文ではなく、ある程度まとまりのある文で話すことができます。
上級のレベル
社会生活におけるほとんどの場面で、大きな問題なく、さまざまな状況や相手に配慮した適切なコミュニケーションができるレベル。複雑で困難な課題や、専門的な話題や抽象的な内容についても対応できる。
参照:国際交流基金 日本語教授法シリーズ 第10巻「中・上級を教える」
中級から上級になると、さらに専門的で抽象的な内容について対応できるようになります。
「抽象的」ってすごく難しいんですよね。日本人でも、抽象的なことを説明しようとすると、説明できなかったりします。
抽象的な内容にも対応できるようになったら、上級だと思ってください。
日本語教育「中上級」、4つのポイント
日本語の「中上級」の授業では、4つのポイントがあります。(課題遂行を目的にした場合)
- 内容を重視する
- インプットからアウトプットを意識する
- いくつかの技能を組み合わせた授業を組み立てる
- 正確さ<流暢さ(ペラペラ感)
それでは、詳しく説明します。
1.内容を重視する
初級の頃は、語彙や文法などの形式に重点を置きますが、中上級では内容そのものやメッセージを重視します。
中上級では、語彙や文法などは、これらの活動を通して運用力を高めていきます。
例えば、授業で健康について取り扱ったとします。
そのとき、テーマの表面的な部分を理解して終わるのではなく、新聞や雑誌など、いろいろな媒体から記事を読んで、理解を深めます。
目指すのは、自分の意見が述べられることです。
2.インプットからアウトプットを意識する
運用力をつけるには、たくさんのインプットをして、「理解できるインプット」になることが条件だと言われています。
理解できるインプットになるためには、背景知識や文脈・場面を利用して、「推測」や「予想」をします。
アウトプットをすると、自分の日本語能力が十分でないことに気がつき、インプットに注意をするようになります。
このようにインプットからアウトプットへの流れを繰り返し、運用力を伸ばしていきます。
ポイントは次の2つです。
- 「理解できるインプット」にするために、「背景知識」や「文脈・場面」を利用し、「推測」や「予測」をできる能力を育てる。
- アウトプットで日本語力が不十分であることに気づかせる。
3.いくつかの技能を組み合わせた授業を組み立てる
中上級の授業を考えるときは、「読む」「聞く」「書く」「話す」のどれかの技能だけをするのではありません。
いくつかの技能を組み合わせることで、実際のコミュニケーション活動と近くなります。
例えば、環境問題を授業で取り上げた後に、新聞の記事を読んだりニュースを見たり、本を読んでレポートを書いたり、クラスメイトとディスカッションをするなどです。
4.正確さ<流暢さ(ペラペラ感)
初級のときは正確さに重点が置かれがちですが、中上級では、流暢さ(ペラペラ感)を高めることが重要です。
言語を話すときは、正確さだけでなく、流暢さも求められるからです。
言語知識があるだけでは、流暢(ペラペラ)には話せません。
その持っている知識を瞬時に引き出して使えるようになることが必要です。
ペラペラ感を出すためには、シャドーイングもおすすめですよ!
アウトプットを繰り返すことで、持っている言語知識を瞬時に使えるようになり、流暢に話せるようになります。
発音指導に関しては「【発音指導】たったこれだけ?日本語の発音の教え方4つのポイント!」の記事をどうぞ。
「中上級」の授業で教師が気を付けたい2つのポイント
次に、「中上級」の授業で教師が気を付けたいことを2つ紹介します。
話し方・話すスピード
初級の授業では、「はっきり」「少しゆっくり」を意識して話していたと思います。
しかし、中上級では、話すスピードはあまり「ゆっくり」話さなくて大丈夫です。
実際に、日常会話でゆっくり話すときは、あまりないですよね・・・?日本人が普段話すスピードに慣れていかないといけません。
早口になる必要はありませんが、学生の耳を慣らすためにも普段通りに話すスピードで話してください。
語彙・文法のコントロール
初級の授業では、その課までに勉強した語彙や文法を使って話すようにコントロールしていたと思います。
中上級では、あまり神経質になる必要はありません。
難しい言葉があったら、日本語で説明をすればいいんです。
語彙のコントロールに関しては、私の意見を「語彙のコントロールはしなきゃダメ?|日本語教師の疑問に見解を述べます」の記事で紹介しています。
初級では、新しい言葉は絵カード(イラスト)を見せて理解していたと思いますが、中上級になると抽象的で絵(イラスト)に表せないものもあります。
「この言葉を簡単に説明するにはどうすればいいのか」を常々考えておくと、授業で言葉の意味を聞かれたときに、答えやすくなりますよ。
しかし、文法だけは少し気をつけましょう。N3のときにN1の文法をあえて使う必要はありません。
文法の導入は、できるだけ簡単な言葉にしましょう。
新しい文法を勉強するのに、言葉まで難しかったら簡単に理解できませんからね。
【参考】【実際の導入例を紹介】日本語「中級文法」の教え方と5つのポイント
【まとめ】中上級の教え方
中上級を教えるときのポイントをまとめます。
- 内容を重視する。
- インプットからアウトプットを意識する。
- いくつかの技能を組み合わせた授業を組み立てる。
- 正確さではなく、流暢さ(ペラペラ感)の方が大切。
- 話し方・話すスピードは普段の日常会話ぐらいでよい。
- 語彙のコントロールはあまり気にしない。
学生だけでなく、私たち日本語教師も日々勉強です。
日本語教師としての幅を広げるためにも、中級以上を教えられるように、ぜひチャレンジしてみましょう。
▼今回紹介した「中上級を教えるときの考え方」の本はこちら
以上、たのすけでした。
日本語教師のまとめ記事はこちら
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≫【完全保存版】日本語授業のやり方や教え方がわかるまとめ記事
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。