学習者から、以下のような質問をされました。
「先生、「~ないことはない」と「~ないこともない」は同じですか?」
あなたはどう答えますか?
こういう微妙な違いを聞かれたときは、準備していないとすぐに回答できないですよね…!
しかも二重否定の表現なので、結局どっちなの?と考えてしまうかと思います。
まず、例文で比べてみましょう。
- 野菜を食べられないことはない。
- 野菜を食べられないこともない。
どうでしょうか・・・?何か違いはあるでしょうか?
「うーん、どうかな…?」「学習者の質問に何て答えよう…」と思ったのなら、ぜひこの記事を読んでみてください。
この記事を読めば、以下のことがわかります。
目次
「~ないことはない」「~ないこともない」の違いはある?
まずは結論から述べます!
「~ないことはない」と「~ないこともない」は同じでOK!
「~ないことはない」と「~ないこともない」について、文法書をいろいろ調べてみたのですが、違いについて言及している文法書は一冊以外ありませんでした。
また、問題集には同じだと書いてあるものもあります。
なので、冒頭の学習者に質問には「同じです」と回答していいと思います。
一冊だけ文法が分かれて書かれている文法書があったので、それぞれの特徴と違いをまとめました。
こちらの「日本語文型辞典」です↓
「~ないことはない」の特徴
「~ないことはない」の用法や例文についてはこちら≫【N3文法解説】~ないことはない|用法・例文
「~ないことはない」には、2通りの使い方があります。
①全部否定→100%肯定
A:明日までにレポートを書き終えるのは無理じゃない?
B:できないことはないよ!(⇒「できない」を「ない」で否定している⇒できる!(肯定))
②断定を避ける表現
A:明日までにレポートを書き終えられる?
B:うーん・・・できないことはないけど・・・。(できるが必ずではない(断定を避けている))
「~ないこともない」の特徴
「~ないこともない」は、「そのような面がある/可能性がある」という意味で、肯定的な意味を表します。
また、断定を保留する気持ちを表すときに使うことが多いです。
例えば、以下のような場面で使います。
- その字は「シ」に見えなくもない。でも「ツ」にも見えるし・・・。
- テストで70点だったの?頑張ったと言えなくもないけど、うーん・・・。
- 2階から音がした気がしなくもない。見に行ったほうがいいかな?
「~ないことはない」と「~ないこともない」の2つの違い
①全部否定(100%肯定)のときは「~ないことはない」しか使えない
「~ないこともない」には、全部否定で100%肯定になる意味はありません。
A:明日までにレポートを書き終えるのは無理じゃない?
B:できないことはないよ!(⇒できる!(100%肯定))
C:できないこともないよ。(⇒できる可能性はあるが、100%肯定ではない)
②断定を避ける意味のときは、置き換えOKだが、ニュアンスが異なる
断定を避ける意味のときは置き換えできますが、ニュアンスが異なると思います。
「~ないことはない」は、できない可能性があるのに対して、「~ないこともない」は、できる可能性を表し、肯定的な意味になります。
A:明日までにレポートを書き終えられる?
B:うーん・・・できないことはないけど・・・。(できるが必ずではない)
C:うーん・・・できないこともないけど・・・。(できる可能性がある)
つまり、以下のような違いがあるのかなと思います。
- ~ないことはない:ネガティブな肯定(ちょっとは可能性があるけど、必ずじゃない)
- ~ないこともある:ポジティブな肯定(そういう可能性がある)
注意点
①の全部否定(100%肯定)の意味なのか、②の断定を避ける表現なのかは、捉え方によって変わると思います。
例えば、①の例文も断定を避ける言い方だと捉えることもできますよね。
これは話し手のその時の雰囲気だったり、言い方だったりで変わるものなので、文章を読んだだけではわからないことだと思います。
「明日までにレポートを書き終えるのは無理じゃない?」
と言われたときに、
「できないことはないよ!」
と強く言ったら、①の全部否定(100%肯定)の意だと捉えることができますし、
「できないことはないかな」
と悩みながら言ったら、②の断定を避ける意味だと考えることができます。
例文で比べてみよう!
以上の違いを踏まえて、冒頭で紹介した例文を比べてみたいと思います。
- 野菜を食べられないことはない。
- 野菜を食べられないこともない。
これだけだと、「同じです」という回答でOKですね。
ニュアンスの違いを説明するのなら、
①は「食べられるけど、あんまり好きじゃないから食べたくないんだよね」という気持ち(どちらかと言うとネガティブな気持ち)が隠れていて、
②は「食べようと思えば食べられるよ」という気持ち(ポジティブな気持ち)があると思います。
もしも、会話でのやり取りなら、①は全部否定(100%肯定)にも断定を避ける言い方にもなるので、その時の雰囲気や状況で、「状況で意味が変わります」になるかと思います。
A:あれ、人参もピーマンも残している。野菜が嫌いなの?
B:野菜を食べられないことはないよ。(食べられるよ!(100%肯定)、または、食べようと思えば食べられる、の2通りの意味がある)
B:野菜を食べられないこともないよ。(少しは食べられる)
【まとめ】「~ないことはない」と「~ないこともない」は同じでOK!でも置き換え×の場合もある
「~ないことはない」と「~ないこともない」の違いについて紹介しました。
もう一度まとめます。
- 「~ないことはない」と「~ないこともない」の違いに言及している文法書はほとんどないので、違いについて聞かれたら「同じです」と答えていい。
- 「~ないことはない」は会話において、相手の発言を全部否定して100%肯定の意味になる使い方がある。(例)A:明日までにレポートを書き終えるのは無理じゃない? B:できないことはないよ!(できる!!)
- 断定を避ける意味の場合、置き換えOK。(例)A:明日までにレポートを書き終わる? B:うーん、できないこと(は/も)ないよ。
日本語を知れば知るほど、日本語って難しいなぁと思いますよね。
ですが、ここが違うのかなと考えて考察するのは、面白くもあると思います!
こういった微妙な違いは学習者が気になるところなので、普段から調べる癖をつけたり、考えたりしておくと、いざ質問されたときに、スムーズに回答できると思いますよ。
以上、たのすけでした。
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。