日本語の初級文法の授業で「導入」のやり方について、こんな不安はありませんか?
この記事は、「日本語教師の養成講座に通っている方」「もうすぐ日本語教師としてデビューする方」「日本語教師になってまだ経験が少ない方」向けに、記事を書いています。
この記事を読めば、以下の疑問が解決します。
日本語の初級文法の授業で「導入」について不安や悩みを持っているなら、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
授業の進め方については「日本語の「授業流れ」|初級文法の授業は5つのパートで組み立てます」をご覧ください。
目次
日本語教育の「導入」について
「導入」とは?
導入とは、「学習項目の形と意味を理解する」活動のことです。
導入は授業の中で一番大切だと言われています。
文型の意味は調べればすぐわかります。調べてもわからない文型の使い方を教えるのが「導入」です。
大切なのは新しく学習する文型が「いつ」「どんなとき」に使うのか、状況設定をすることです。
「日本語で言いたいけど、言えない・・・」
「どう言うんだろう…」
「あ、なるほど!こう言えばいいんだ!」
つまり、導入とは、その文型がどういった場面で、どんな時に使われるのかがわかるようになることです。
導入の大切さは「場面を意識した「導入」が大切|日本語の運用力が伸びるインプットとは?」の記事にも書いているので、どうぞ。
「導入」はいくつ準備すればいいの?
導入の例文は1つだけでなく、3つぐらい準備します。
学習者は頭の中で、次のようなことを考えています。
1つ目の導入を見て、「なるほど。こんなときに使うんだ」と推測します。
2・3つ目の導入を見て、推測が「わかった」に変わります。
だから、導入の例文は1つよりも複数あったほうが意味を推測しやすくていいです。
「導入」の例文を作るときに大切な3つのポイント
導入は、どんな例文でもいいわけではありません。
ここでは、導入の例文を作るときに大切なポイントを3つ紹介します。
例文は学習者にとって身近な文か
導入文は、学習者にとって身近な話題のほうが、想像しやすいので理解しやすいです。
身近な話題といえば、家族・友達・趣味・生活・勉強・アルバイト・・・などです。
例えば、
①N3に合格するために、毎日5時間勉強しています。
②富士山に登るために、毎日1時間ジョギングしています。
①の例のほうが、多くの学習者にとって身近な話題だと思いませんか?
JLPTのN3に合格したいのは誰もが想像できますよね。
②は「富士山は標高が高いから、登るためには体力をつけておかなければならない。そのために、毎日ジョギングをしよう」とここまで想像力を膨らませなければなりません。
②の例は、身近とは言えません。
難しい言葉を使っていないか
導入文を作るときは、「シンプル」で「簡単」な文を作りましょう。
なぜなら、新しい文型を導入するのに難しい言葉を使っていたら、さらに意味がわからなくなってしまうからです。
①車を買うために、貯金しています。
②将来車を購入するために、毎月給料から3万円を貯金しています。
①と②のどちらが導入文にふさわしいと思いますか?
一目瞭然、①ですよね。
②は「購入」と難しい言葉を使っているうえに、「将来」「毎月給料から3万円」など、なくてもいいことが書いてあります。
導入文は「シンプル is ベスト」がいいです!!
文型の用法は正しいか
日本語には同じ形でも意味が複数ある文型があります。
例えば、「~ています」には現在進行形、継続など、複数の意味を持っています。
まずは、どの意味を「導入」するのか把握します。その後に、正しい使い方の例文を作ります。
- ミラーさんは歌を歌っています。(現在進行形)
- ミラーさんは結婚しています。(継続)
- ミラーさんは銀行で働いています。(職業)
- ミラーさんは毎朝ジョギングしています。(習慣)
日本語には複数の意味を持っている文型も多いので、導入するときは使い方を間違えないように注意ですよ。
そのために、導入の例文を考える前に、まずは文法分析をして正しい意味と使い方を理解する必要があります。
初級のおすすめの文法書は「日本語教師に必須の「初級文法の本」はコレ!~購入するべき本3冊~」の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
「導入」の例文提示の6つのやり方
導入の方法はいくつかあります。ここでは、6つの導入方法を紹介しますね。
絵カードを使う
「~ことができます」を絵カードを使って導入します。
絵カードを見せて、次の文を言います。
- 山田さんは泳ぐことができます。
- 田中さんは泳ぐことができません。
初級のうちは話せる語彙が少ないので、絵カードで視覚的に見せると学習者はわかりやすいです。
絵カードだけで示せるものは少ないので、口頭でも状況を説明するとわかりやすくなります。
図を描いて説明する
図を書いて「~ています」を導入します。
- 結婚しています。
絵カードと同様に図に書いたほうがわかりやすい場合があります。
モノ・人の移動や時間の経過などを表す文型は図を書くと理解しやすくなります。
ジェスチャーをする/実際にやってみる
実際にあるものを使って、「これ」「それ」「あれ」を導入します。
携帯電話を指しながら、
- これはわたしの携帯電話です。
- それは山田さんの携帯電話です。
教室の時計を指しながら、
- あれは時計です。
「こそあ」や距離、位置に関係する文型、「あげます」などの授受動詞、「行きます/来ます」などの人や物が移動する動詞は、実際にやったほうがわかりやすいです。
状況設定を口頭で説明する
「もし~たら」を状況設定をして導入します。
(以下、教師の発話)
私は車がほしいです。
でも、お金がありませんから、車を買うことができません。
お金が100万円あります。車を買います。
もしお金が100万円あったら、車を買います。
文法を使うときの状況を口頭で説明し、導入します。
状況設定の説明が長すぎるとわかりにくくなるので、注意しましょう。
学習者とやり取りしながら導入する
学習者とやり取りをしながら、「~ことができます」を導入します。
(「日本」と漢字を板書する)
T:この漢字は何ですか。
S:「にほん」です。
T:みなさんは、この漢字を読むことができます。
(「薔薇」と漢字を板書する)
T:この漢字は何ですか。
S:わかりません。
T:みなさんは、この漢字を読むことができません。
学習者とやり取りをするときは、上手にQAをしながら導入すると、理解しやすいです。
詳しくは「導入のとき、教師が一方的に話してない?|初級文法の導入方法を例で紹介します」の記事でやり方を紹介しています。
学習者を相手役に説明する
学習者を相手役にして、「~てもいいですか」を導入します。
(先生は学生の隣に行く)
T:疲れましたから、ここに座りたいです。Sさん、ここに座ってもいいですか。
S:はい、いいですよ。
相手役がいると、実際にどんな状況で使えばいいのか想像しやすいです。
「~てもいいですか」の許可を求める文型、「~ませんか」などの相手を誘う文型などは、この導入方法が合っています。
学習者を相手役にすると、想定した回答と違う場合がありますが、慌てないようにしましょう。
【まとめ】日本語の初級文法の「導入」のやり方
日本語教師になったばかりの頃、一番悩むのが文型の「導入」です。
導入がうまくできると授業もスムーズに進みますので、しっかりと導入のポイントを押さえましょう。
- 導入は最低3つ準備する。
- 学習者にとって身近な例文になっているか。
- 難しい言葉を使っていないか。
- 用法は正しいか。
- 文型にあった「導入」のやり方ができているか。
「みんなの日本語の教師用手引き」にも導入例が書いてありますので、参考にしてみてください。
「みんなの日本語の教師用手引き」は「新人日本語教師に必須の本!日本語教師になったら購入するべき本5冊~」の記事で紹介しています。
導入のやり方がわかったら、次は「初級文法の練習方法9選|練習のバリエーションを広げたい日本語教師必見!」の記事もどうぞ。
教案が無料で公開されています
絵カードやイラストも無料で手に入ります
≫「みんなの日本語」で使う絵カード&イラストおすすめ厳選8サイト
≫初級を教える日本語教師へ!「導入・練習の絵カード」に使える本9冊
以上、たのすけでした。
日本語教師のまとめ記事はこちら
≫日本語教師になりたい方向けのまとめ記事
≫授業のやり方や教え方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
≫【完全保存版】日本語授業のやり方や教え方がわかるまとめ記事
≫働き方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。