「『できる日本語』の教科書は、どうやって進めればいいの?」
こんな疑問を持っている日本語教師の方向けの記事です。
私は「みんなの日本語」も「できる日本語」も実際に使ったことがあります。
個人的には「できる日本語」の教科書の方が、会話中心の授業ができて好きです!
授業の流れさえ覚えてしまえば、「できる日本語」の教科書は、教師にとって授業しやすいと思います。
「できる日本語」の授業の進め方がわからない!という日本語教師の方は、ぜひこの記事を読んでみてください。
「できる日本語」の授業の進め方がわかって、授業に自信を持って臨むことができますよ!
目次
「できる日本語」の教科書について
「できる日本語」の授業の進め方の前に、「できる日本語」がどんな教科書なのか理解を深めておきましょう。
そうすることで、どう教科書を使ったらいいのか理解しやすくなると思います。
「できる日本語」は、どんな教科書?
「できる日本語」は、「みんなの日本語」の文型積み上げ型とは違い、タスク先行型の教科書です。
「できる日本語」は、自分のことを話したり、日本語でコミュニケーションをすることを目的に作られました。特に、対話力に重きを置いています。
著者の嶋田先生は、以下のように「できる日本語」の特徴を述べています。
①行動目標(Can-do-statement)が明確である。
②場面・状況を重視している。
③学習者にとって必然性のあるタスクである。
④タスク先行(まずチャレンジ!)で進める。
⑤文脈を大切にしている。
⑥「固まりで話すこと」を大切にしている。
⑦スパイラル展開を大切にしている。
⑧「他者への配慮」のある談話となっている。
引用:http://www.dekirunihongo.jp/wp-content/uploads/doc/kaisetu01.pdf
「できる日本語」でどんな授業を目指す?
「できる日本語」でどんな授業を目指すのか、著者の嶋田先生の言葉を引用します。
①教室のコミュニティ化を図り、外とつながる授業
②教室の中で、多方向性のある「多様な対話」が生まれる授業
③達成感が実感できる授業
④学習者が自立的に学びたくなる授業
引用:http://www.dekirunihongo.jp/wp-content/uploads/doc/kaisetu01.pdf
「できる日本語」の基本的な流れ
「できる日本語」の基本的な授業の流れを紹介します。
初級はスモールトピックが3つありますが、初中級は2つです。
Can-doの確認と状況イラストの確認は、スモールトピックの初めだけでいいです。
一つのスモールトピックの中に文型が3~6個あるので、文型のたびに、3.チャレンジと4.言ってみようを繰り返します。
嶋田先生がYou Tubeでも解説していますので、よかったらご覧ください。
参考:https://youtu.be/qGHmnUMlmyo
語彙は授業中にやらないの?
「できる日本語」では、授業の最初に語彙の導入をしません。
言葉は文脈の中で覚えて導入してこそ意味があると考えているからです。
「できる日本語」は、各国の語彙リストが無料でダウンロードできます。
なので、学習者には授業の前に語彙を予習させておくのがおすすめです。
理由は、事前に語彙を予習しておくことで、授業中に語彙がわからないので、なかなか授業が進まなかった…ということがなくなるし、できるだけ会話練習に時間を割きたいと思っているからです。
できる日本語の語彙リストはアルクとできる日本語ひろばでダウンロードできます。
「できる日本語」の進め方とポイント
では、順番に進め方とポイントを解説していきます。
1.話してみよう
話してみようでは、その課に関係あるイラストや写真を見ながら話し合います。
課に関することなので、その課で学習する内容をイメージするのに役立ちます。
ポイントは、学習者が現在知っている日本語でいいので、たくさん日本語で会話をして、課のイメージを膨らませることです。
「日本語でこんなに話せるんだ!」という達成感と「これからどんなことを学ぶのかな?」というワクワク感を感じてもらいます。
2.聞いてみよう
聞いてみようでは、CDを使って会話を聞きます。この課で学習することが会話の中で、どう使われているのかを確認します。
これから学習する内容なので、すべて聞き取れなくて構いません。
聞き取れた単語から、課で学習する内容や場面を想像します。
ポイントは、今はまだどんな会話だったのか理解できていない部分があっても、この課を学習することで、理解できるようになる!ということです。(実際に、課の最後に「もう一度聞こう」で、ここと同じ会話のCDを聞きます)
3.チャレンジ
Can-doの確認
最初に、教科書の右上に載っているCan-doを確認し、学習者に読んでもらいます。
このCan-doはスモールトピックの目標です。
Can-doは、その課を学習したら何ができるようになるのか、という目標(ゴール)ですから、とても大切です。
この課のCan-doができるようになるために、必要な文法を学習していきます。。
状況イラストの確認
チャレンジのイラストに行く前に、状況イラストで全体の場面を確認します。
いつ・どこで・誰が・どんな状況で会話が行われているのかを確認することで、会話のイメージをつかみやすくなります。
コマイラストの確認
コマイラストは、細かい状況が設定されています。
学習者にこんな状況の時、日本語で何と言ったらいいかを考えてもらいます。
既習の語彙や文法を使って言えるときは、どんどん発話してもらいましょう。
チャレンジのコマイラストは、「導入」にあたる部分です。
ポイントは、言いたいけど、言えない…という状況を作り、言えるようになりたい!と思ってもらうことです。
学習者からどんな会話をしているのか引き出したら、実際にCDを聞いて、日本語を確認します。
チャレンジの文だけだと、導入としては不十分なので、それ以外に導入を行います。
他の導入を準備する理由は、チャレンジの文でどんな場面で使う文型なのかをわかった後に、さらにその理解を深める意味で他の文でも導入を行います。
ただし、チャレンジの文だけで理解できそうな場合は、他の導入はしません。
他の導入を準備する場合は、チャレンジの文とは接続が違う導入文を準備しましょう。
4.言ってみよう
言ってみようは、別冊と本冊に分かれています。
別冊は、教科書に付属で付いている冊子のことで、本冊とは教科書のことです。
すべての文型に別冊と本冊の言ってみようがあるわけではありません。
別冊言ってみよう
まずは、別冊言ってみようで、短文レベルで練習をします。
別冊言ってみようは、 「練習」にあたる部分で、「みんなの日本語」で言えば練習Bです。
別冊の言ってみようだけで練習が十分であれば他の練習は必要ないですが、不十分であれば、別の練習を準備しましょう。
学習者のレベルによっては、別冊の練習が必要ない場合もあります。
練習するときは、こちら本が便利です。
短文レベルが言えないと、その後の本冊言ってみようで会話練習ができないので、しっかりと言えるようにしておきたいですね。
ときどき、別冊言ってみように新出語彙が入っている場合があります。
理由は、「できる日本語」は場面や状況を大切にしたテーマをもとに作っているので、入れたくても入れられない語彙があるからです。
新出語彙を別冊言ってみように入れ、語彙を充実させています。
本冊言ってみよう
本冊言ってみようでは、会話の練習をします。
本冊言ってみようは、「みんなの日本語」で言えば、練習Cです。
自分のことに置き換えて会話練習することで、活動(応用練習)にもなります。
実際にありそうな状況が多く使われているので、本冊言ってみようを暗記すれば、実際のコミュニケーションで応用可能です。
ポイントは、教科書の文字を入れ替えて終わりではなく、自分のことに置き換えて自由に考えてもらうことです。
実際に教科書に以下のマークもあります。
😊:自分のことを話す
💭:会話の一部を自分で考える
本冊言ってみようは、イラストを見ただけでは会話を考えるのが難しい場合があります。
これは難しそうだな…と思ったら、クラス全体でキーワードを確認すると、練習がスムーズに進みます。
5.やってみよう
やってみようは、スモールトピックのCan-doを達成するためのタスクです。
タスクの前に、まずはCDを聞きます。
これは聴解の練習ではなく、スモールトピックでどんな学習をしたのか復習をするのが目的です。
どんな会話をしていたのかも、これからタスクを行う上でのヒントになります。
タスクは、ロールプレイをしたり、ペアで話したり、会話を作ったりなど、スモールトピックのCan-doに合わせたタスクがあります。
時間がない…といって、最後のやってみようを省略するのはよくないです。
なぜなら、「できる日本語」はタスク先行型の教科書なので、授業のゴールがあって、「何ができるようになったのか」というCan-doが大切だからです。
時間がないからといって最後のやってみようを省略してしまうと、結局は文法重視になってしまいます。
やってみようで運用力をつけたり、達成感を感じられる授業にしたいですね。
6.できる!
できる!は「活動」です。その課のゴールです。
この「できる!」ができるようになるために、今までの練習があります。
できる!の前には、クラスでCan-doを確認しましょう。
各課のCan-doは、こちらから確認できます。
≫「できる日本語」初級のシラバス一覧
≫「できる日本語」初中級のシラバス一覧
できる!は一番盛り上がるし、学習者も楽しみにしています。
教科書にできるの活動例が載っていますが、その課のCan-doが達成できるなら、書かれている活動をする必要はありません。
クラスに合わせて変えるといいと思います。
こちらで、できる!の活動例が紹介されています。
7.話読聞書
話読聞書の目標は、固まりで話しができるようになることです。
注意すべきは、読解の練習ではありません。
ポイントは、自分のことに置き換えてまとまった話ができるようにすることです。
右に吹き出しがあるので、その質問をすることで、話しやすくなります。
話読聞書は作文のためのものではありませんが、自分のことに置き換えて作文練習もできます。
授業で書く練習をすると時間がもったいないので、宿題にすることが多いです。
8.もう一度聞こう
最後に、CDをもう一度聞きます。このCDは課が始まる前に聞いたCDです。
最初は聞き取れなかったり、理解できない部分もあったと思いますが、学習後に聞くことで理解できるようになっています。
「できる日本語」の授業は、プロジェクターを使うのがおすすめ!
「できる日本語」をクラスでやるなら、プロジェクターを使い、大画面で授業をするのが便利です。
理由は、チャレンジに出てくるコマイラストは小さいので、大画面で見た方が見やすいし、どこを指しているのかわかりやすいからです。
また、プロジェクターを使うことで文字を追うのではなく、前を見るので、話しやすい雰囲気も生まれると思います。
まとめ
「できる日本語」の授業の基本的な進め方を紹介しました。
日本語学校で教える場合は、学校によって決められた進め方があると思うので、確認してみましょう。
もう一度、進め方をまとめます。
- 話してみよう
- 聞いてみよう
- チャレンジ(Can-doの確認、状況イラストの確認、コマイラストの確認)
- 言ってみよう(別冊言ってみよう・本冊言ってみよう)
- やってみよう
- できる!
- 話読聞書
- もう一度聞こう
※文型の数だけ、3.チャレンジのコマイラストを確認して、4.言ってみようをやる。
文型やクラスのレベルによって導入や練習を追加したり、または、別冊言ってみようの練習を省いたりしますが、基本的には「できる日本語」は教科書通りに進めるのがおすすめです。
「できる日本語」の教案はこちらから見られますので、よかったら参考にどうぞ。
教え方ガイドもあります。
以上、たのすけでした。
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。