「『みんなの日本語』の教科書は、どうやって進めればいいの?」
こんな疑問を持っている日本語教師の方向けの記事です。
「みんなの日本語」を使用している日本語学校や学習機関は多いと思います。
今回紹介するのは、実際に私が勤務していた日本語学校で教えてた授業の流れなので、参考になると思います。
一つの進め方として参考にしてみてくださいね。
目次
「みんなの日本語」の教科書について
「みんなの日本語」はどんな教科書?
「みんなの日本語」の授業の流れを知る前に、どんな教科書なのかを知っておきましょう。
「みんなの日本語」は、文法積み上げ式です。
文法積み上げ式とは、その名の通り、簡単な文法から学習をし徐々に難しい文法を学習していきます。
おそらく、「みんなの日本語」を使っている日本語学校や学習機関が一番多いのではないでしょうか。
理由は、教師用の教え方の手引きやイラスト集、学習者用の翻訳版が多くの言語で翻訳されていること、副教材(読解、聴解、漢字etc…)が揃っているからだと思います。
教師にとっても学習者にとっても、「みんなの日本語」は学習しやすいのです。
それから、JLPT(日本語能力試験)に出題される語彙や文法が網羅されていることも、「みんなの日本語」が多くのところで支持されている理由だと思います。
それぞれの課の学習目標と学習項目はこちら
≫「みんなの日本語Ⅰ」の1~25課の学習目標と学習項目(文型)
≫「みんなの日本語Ⅱ」の26~50課の学習目標と学習項目(文型)
「みんなの日本語」の構成
まずは、「みんなの日本語」の構成を紹介しますね。
「みんなの日本語」は、1つの課は8ページで構成されています。
ページ数 | 項目 | 内容 |
1ページ目 | 文型 | 文の基本形(文型)を紹介 |
例文 | 文型の質問と答えを紹介 | |
2ページ目 | 会話 | 職場・地域・家庭などの日常的な交流場面の会話文(CD・DVDあり) |
3ページ目 | 練習A | 視覚的に文の形や動詞・形容詞の活用を助ける(※練習ではない) |
4・5ページ目 | 練習B | 文型を習得するための練習 |
6ページ目 | 練習C | 文型の機能を生かして短い会話を練習 |
7・8ページ目 | 問題 | 個人質問(CDを聞いて、個人の質問に答える)、聴解、文法、読解 |
「みんなの日本語」の基本的な流れ
「みんなの日本語」の基本的な授業の流れを紹介します。
「みんなの日本語」では、1課に新しい文型が3~6つあるので、その文型ごとに対応する練習A→練習B→練習Cを学習し、文型の数だけそれを繰り返します。
「みんなの日本語」の進め方とポイント
では、順番に進め方とポイントを解説していきます。
1.言葉を覚える
最初に「みんなの日本語」の翻訳版を見ながら、教師の後にリピートしてもらいます。目的は、語彙の発音を確認することです。
「みんなの日本語」には、各国の翻訳版があり、私の勤務していた日本語学校では、学習者は教科書だけでなく、翻訳版も必須でした。
一通り発音を確認したら、絵カードを使って語彙の練習をします。
「みんなの日本語」には各課の語彙に絵カードがあるので、それを使います。語彙の絵カードは「みんなの日本語 絵教材CD-ROMブック」の本にあります。
テンポよく語彙を繰り返し、暗記できるように練習しましょう。
私が勤務していた日本語学校では、その課の初回の授業(前半部分)で語彙の導入・練習をしていました。
後半部分の授業を担当するときも、一通り語彙を復習してから始めます。
日本語学校によっては、学習者の負担を少なくするために、語彙を文型ごとに導入する場合もあります。
2.練習A(文型導入)
2-1.文型の導入
語彙の練習が終わったら、学習する文型を導入します。この導入は教師が準備した導入です。
導入文は3つぐらい準備します。
3つ準備する理由は、学習者は1つの目の導入で「なるほど、こんなときに使うんだ」と推測をし、2・3つ目の導入で推測が「わかった!」に変わるからです。
文型の導入はとても大切で、いつ・どんな場面で使う文型なのかわかるような導入を準備しましょう。
導入文を考えるときは、以下の3つを意識してみてください。
導入については「日本語の初級文法「導入」のやり方|大切なポイントは3つあります」の記事で詳しく書いています。
初級のときは絵カードを使ったほうがイメージがわきやすいので、絵カードで導入するのをおすすめします。
導入は、「みんなの日本語 導入・練習イラスト集」という「みんなの日本語」に対応したイラストが便利ですよ。
2-2.練習A
練習Aは文法理解を視覚的に助けるために、色やレイアウトを工夫して視覚的に提示してあるもので、練習ではありません。
練習ではなく、最後の確認と口慣らしに使います。
教師の後にリピートして、口慣らしします。
3.練習B
練習Bは、基本文型の定着を図ることが目的の口頭練習です。
練習Bの練習だけでは十分ではないので、準備した練習→練習Bという風に進めます。
文型に合わせていくつか練習を準備します。
練習方法は、いくつかあって、下記のようなものがあります。
詳しい練習の方法は「初級文法の練習方法9選|練習のバリエーションを広げたい日本語教師必見!」の記事に書いてあります。
練習Bはイラストのあるものが多いので、イラストを拡大コピーし、教科書を見せないで練習するのもいいですね。
全員でコーラスしてもらう、個人を指してから全員でコーラスをするなど、時間を考慮しながらメリハリをつけて進めます。
ここの練習は単調になりやすく飽きやすいので、テンポよく進めることが大切です。
練習絵カードなら、下記の本は取り扱っている文型が豊富なので、おすすめです。
4.練習C
練習Cは、文型が実際にどのような場面や状況で使われるかを理解し、実際のコミュニケーションの中で使えるようになることを目指します。
練習Cのやり方は、日本語学校によってやり方が違うように思います。
私が勤務していた日本語学校では、練習Cのイラストを拡大コピーしてホワイトボードに貼ります。(練習Cのイラストはこちらの本にあります)
どんなか会話をしているか考えてもらった後で、模範例として教科書の例文をホワイトボードに書きます。
全員でリピート練習した後に、順番に文を消していきます。(消す順番は、簡単なものから消します)
1回リピートしたら、文を一つ消して、2回目をリピートしたら、さらに一つ文を消して…という風に、どんどん文を消していきます。
最後には全ての文が消され、ホワイトボードには何も書かれておらず、学習者は練習Cの会話文を暗記している状態です。
クラスを半分に分け、AとBで会話をしてもらいます。(本当の会話では、一人で二役をすることはないので、AとBに分かれて会話練習をします)
(1)(2)はイラストを見ながらペアで会話文を考えてもらい、最後は発表してもらいます。
できる学習者には会話を発展させ、もう少し長い会話文を作ってもらってもいいですね。
練習Cの会話を暗記することで、実際のコミュニケーションの場で学習した文法が使えるようになることを目指します。
5.応用練習
時間に余裕があれば、学習した文法の運用力をつけるために、アクティビティをします。
応用練習できる文型もあれば、できないような文型もあるので、全ての文型で応用練習するわけではありません。
おすすめは、「みんなの日本語」にある程度準拠した「クラス活動集101」の活動集と「おたすけタスク」です。
「おたすけタスク」はすぐに使えるアクティビティが多いので、初級を教えるときに一冊持っておきたい本です。
6.会話
会話は教科書を閉じて、CDを一度聞かせます。
その後、聞き取れたかどうか、いくつか質問をして確認します。
確認が終わったら、教師の後にリピート→ペアで会話練習をし、クラスの前で発表してもらいます。
7.問題
問題は、聴解の部分は必ず授業中に実施します。
それ以外の問題は、時間があれば授業中に問題を解かせ答え合わせをしますが、時間がなければ問題は宿題にし、翌日の授業で答え合わせをします。
まとめ
「みんなの日本語」の授業の進め方を紹介しました。
日本語学校で教える場合は、学校によって進め方があると思うので、確認しましょう。
もう一度、まとめます。
- 言葉を覚える
- 文型導入(教師が準備した導入→練習A)
- 練習(練習B→練習C)
- 応用練習
- 会話
- 問題
※文型ごとに、対応する練習A→練習B→練習Cを繰り返します。
「みんなの日本語」には、書く練習をするのに「書いて覚える文型練習帳」という教材がありますが、私の勤務していた日本語学校では、授業中はやっていませんでした。
「書いて覚える文型練習帳」は宿題にし、授業中は、できるだけ発話させることに集中させていました。
以上、たのすけでした。
日本語教師のまとめ記事はこちら
≫日本語教師になりたい方向けのまとめ記事
≫授業のやり方や教え方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
≫【完全保存版】日本語授業のやり方や教え方がわかるまとめ記事
≫働き方で悩んでいる日本語教師の方向けのまとめ記事
日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。