学習者から
「先生、「~向き」「~向け」「~用」は何が違いますか?」
と質問されたら、あなたはどう答えますか?
「~向き」と「~向け」は言葉自体が似ているので、学習者から質問されることが多いです。
今回は、同じような意味を持つ「~用」も一緒に、「~向き」「~向け」「~用」の3つの違いについて、例文から違いを考えていきたいと思います。
それでは、さっそく見ていきましょう。
目次
「~向き」「~向け」「~用」の基本的な意味
まずは、基本的な3つの意味を確認します。
~向き:~に合う、~にちょうどいい(どちらかと言えば~に合うようになっている。話者の判断や感覚的な評価)
~向け:~が対象だ、~のためだ(計画や意図されて、対象を~に限定している)
~用:~だけが使う(使用するものに限られる)
では、 それぞれどのような違いがあるのか例文で意味を確認してみます。
女性向きのマンションだ。→女性にちょうどいい(女性が求めるような条件がある)
女性向けのマンションだ。→女性のために作った(もとから女性を対象として作った)
女性用のマンションだ。→女性だけが住める(女性専用)
「~向け」「~向き」「~用」の違いを例文で比べてみよう!
では、同じ例文に3つを当てはめて、OK・NGを考えていきます。
「向け」「向き」「用」の3つともOK
この服は涼しそうで、夏(〇向き 〇向け 〇用)です。
冬(〇向き 〇向け 〇用)のズボンなので、暖かい。
初心者(〇向き 〇向け 〇用)のコースがあるので、スキーが初めてでも安心して滑れる。
意図的に限定されない場合は「~向き」もOKですし、
対象者を限定しているとも考えられるので、「~向け」「~用」もOKです。
「向き」だけOK、「向け」「用」はNG
このお菓子は見た目が可愛いので、プレゼント(〇向き ×向け ×用)だ。
あの店のカレーは3kgもある。量が多いので、男性(〇向き ×向け ×用)だ。
このアパートは部屋が狭いので、ファミリー(〇向き ×向け ×用)ではない。
もともと対象を意図していたり、〇〇専用ではないので、「~向け」「~用」はNGです。
「~向き」を使うときは、意図したわけではないときで、話者の判断や感覚的評価です。
例えば、私はこのお菓子を見て、「見た目が可愛い!プレゼントに最適だ」と思ったら、「プレゼント向きだ」と言えますが、
違う人から見たら、プレゼントにいいかどうかはわかりません。
「向け」だけOK、「向き」「用」はNG
この本は外国人(×向き 〇向け ×用)に簡単な日本語とローマ字も書かれている。
京都には外国人(×向き 〇向け ×用)に、英語が話せるガイドがいる。
このアニメの内容はAIで難しく、大人(×向き 〇向け ×用)に作られている。
このスマホはお年寄り(×向き 〇向け ×用)に、ボタンが大きくて、操作が簡単になっている。
もともと「~が対象」と、対象を意図的にしている場合は、「~向け」を使います。
もしも、意図していない場合なら、「~向き」を使ってもOKです。
〇 この本はローマ字も書かれているので、外国人向きだ。
「~用」を使うと、「~だけが使う」と対象が限定されてしまうので、対象を意図的にしていても、専用でない場合は不自然に感じます。
「向け」「向き」がOK、「用」はNG
マクドナルドのハッピーセットは子供(〇向き 〇向け ×用)だが、大人でも注文できる。
マクドナルドのハッピーセットは何歳でも頼めます。
なので、子供だけが頼める専用商品ではないので、「~用」はNGです。
ハッピーセットは、対象を子供に限定していませんが、おもちゃがあって子供にちょうどいいので、「子供向き」もOKだと思います。
また、もともとは子供を対象に作られているので、「子供向け」はOKです。
「用」だけOK
大学のホームにページは学生(×向き ×向け 〇用)のページがあって、学生以外は見ることができない。
女性(×向き ×向け 〇用)トイレに男性は入ることができない。
ドッグフードは犬(×向き ×向け 〇用)の食べ物だ。
歩行者(×向き ×向け 〇用)の道路は、自転車も車も通れない。
「~向け」と「~用」は意味が似ていますが、「〇〇専用」「〇〇だけが使える」ときは、「~向け」を使ってしまうと違和感があります。
その時は、「~用」というのが自然かと思います。
まとめ|似ているようで「~向き」「~向け」「~用」は使い方が違う!
でも、3つの違いをもう一度まとめます。
~向き:~に合う、~にちょうどいい(どちらかと言えば~に合うようになっている。話者の判断や感覚的な評価)
~向け:~が対象だ、~のためだ(計画や意図されて、対象を~に限定している)
~用:~だけが使う(使用するものに限られる)
例文をもう一度確認しておきます。
☞意味の違いを確認しよう!
- 女性向きのマンションだ。→女性にちょうどいい(女性が求めるような条件がある)
- 女性向けのマンションだ。→女性のために作った(もとから女性を対象として作った)
- 女性用のマンションだ。→女性だけが住める(女性専用)
☞違いが分かる例文で確認しよう!
- この服は涼しそうで、夏(〇向き 〇向け 〇用)です。→対象が限定されていないので、どれもOK。
- このお菓子は見た目が可愛いので、プレゼント(〇向き ×向け ×用)だ。→対象が限定されておらず、話者の判断。(「~向き」は、話者の判断や感覚的評価に使う)
- このスマホはお年寄り(×向き 〇向け ×用)に、ボタンが大きくて、操作が簡単になっている。→もともとお年寄りを対象に作られているが、お年寄り専用ではないので、「~向け」がよい。
- マクドナルドのハッピーセットは子供(〇向き 〇向け ×用)だが、大人でも注文できる。→子供だけが対象ではないので、「~向き」「~向け」のどちらもOK。
- ドッグフードは犬(×向き ×向け 〇用)の食べ物だ。→犬専用なので、「~用」が自然。
以上、たのすけでした。
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。