学習者から
「先生、「考えのとおり」と「考えどおり」は意味は同じですか?」
と質問をされたら、あなたはどう答えますか?
「~とおり」は、「~と同じに」という意味で使いますよね。
接続は、以下の通りです。
V辞書形/Vタ形/Nの+とおり
N+どおり
あれ?名詞の接続が二つある・・・!と思ったかと思います。
そうなんです・・・!
「~とおり」は、名詞に接続する場合、「Nのとおり」「Nどおり」の二通りあります。
二通りあると、同じで使っていいのか、違いはあるのか、違いがある場合どう使い分けたらいいのか・・・と疑問がわきますよね。
今回は、「Nのとおり」と「Nどおり」の違いと使い分けに、たくさんの例文から分析して考えていきたいと思います。
「~とおり」の用法はこちら≫【N3文法解説】~とおり(に)|用法・例文
目次
「Nのとおり」と「Nどおり」の違い
まずは、文法書で「Nのとおり」「Nどおり」にはどんな違いがあるかを探してみたいと思います。
その違いについて書かれている文法書は一冊しかありませんでした…!
書かれていた文法書は、こちらです↓
「日本語文型辞典」では、下記のように書かれていました。以下、引用します。
予定・計画・指示・命令などの名詞や「思う・考える」などの思考動詞の連用形について、「それと同様に」「その通りに」「そのままに」と言った意味を表す。この用法では、いつも「・・・どおり」となる。
引用:グループ・ジャマイ『教師と学習者のための日本語文型辞典』くろしお出版,1998年、P319
「日本語文型辞典」によると、「Nのとおり」と「Nどおり」はどんな言葉も置き換えられるわけではないことがわかります。
Nのとおり?Nどおり?例文で考えてみよう!
では、例文をたくさん挙げて、考えてきたいと思います。
分析するときのポイントは、同じ例文に当てはめることです。
そうすることで、どちらもOK、片方はOKというのがわかり、考えるときに役立ちます。
文法書から「Nのとおり」はNG、「Nどおり」はOK
まずは、「日本語文型辞典」に書かれている言葉で「Nのとおり」「Nどおり」に当てはめてみます。
「Nのとおり」はNGで、「Nどおり」はOKです。
明日は予定(×のとおり 〇どおり)、8時に出発します。
計画(×のとおり 〇どおり)、今日も3時間勉強する。
店長の指示(×のとおり 〇どおり)、お客さんが帰ったテーブルをきれいにした。
部長の命令(×のとおり 〇どおり)、1週間アメリカ出張へ行かなければならない。
田中さんは自分の思い(×のとおり 〇どおり)にならなかったので、怒っているらしい。
私の考え(×のとおり 〇どおり)、この商品はよく売れた。
では、次は3パターンに分けて、もう少し例文に当てはめてみます。
「Nのとおり」はNG、「Nどおり」はOK
説明(×のとおり 〇どおり)に作ってください。
想像(×のとおり 〇どおり)、この色はあなたに似合う!
私の予想(×のとおり 〇どおり)、日本が2-0で試合に勝った。
希望(×のとおり 〇どおり)の部署に配属されなかった。
母の期待(×のとおり 〇どおり)、テストで100点を取れた。
スタッフみんなの要求(×のとおり 〇どおり)、給料が1万円増えた。
使ったら元(×のとおり 〇どおり)に戻してください。
料理は基本(×のとおり 〇どおり)に作るのが一番おいしく出来上がるコツだ。
先輩のアドバス(×のとおり 〇どおり)にやったら、ラケットにボールが当たった!
順番(×のとおり 〇どおり)にボタンを押してください。
「日本語文型辞典」には、予定・計画・指示・命令などの名詞や「思う・考える」などの思考動詞の連用形は「Nどおり」になると書いてありました。
上記の例文を確認すると、頭の中で思考するような言葉や指示・命令する意味の言葉が多いと思います。
「Nのとおり」「Nどおり」ともにOK
マニュアル(〇のとおり 〇どおり)に操作してみてください。
先生のお手本(〇のとおり 〇どおり)に踊っているが、上手に踊れない。
見本(〇のとおり 〇どおり)に書いてください。
説明書(〇のとおり 〇どおり)に組み立てれば、簡単にできるよ。
型(〇のとおり 〇どおり)の物を作る。
ここにある予定表(〇のとおり 〇どおり)に勉強を進めてください。
上記の例文は、どちらを使っても不自然じゃないと思います。
「Nどおり」しか使えないときと何が違うんだろう・・・と考えてみました。
目の前に実体(形)として存在する物の場合、「Nのとおり」を使ってもいいのかなと思いました。
つまり、視覚で確認できるかどうか、です。
例えば、実体がない「説明」だと「説明のとおり」は不自然ですが、実体がある「説明書」だと、「説明書のとおり」でも不自然じゃなくなります。
説明(×のとおり 〇どおり)に作ってください。
説明書(〇のとおり 〇どおり)に組み立てれば、簡単にできるよ。
この例で言えば、
使ったら元(×のとおり 〇どおり)に戻してください。
は、「元のとおり」はNGですが、今目の前で見ながら、「これが元の場所だよ。覚えておいてね。使ったら、元のとおりに戻してね」ならOKになるでしょうか。
「Nのとおり」はOK、「Nどおり」はNG
申し込み方法は次(〇のとおり ×どおり)です。
下記/上記(〇のとおり ×どおり)に書いてください。
決定事項につきましては、以下/上記(〇のとおり ×どおり)です。
上記の例文は、「Nどおり」は不自然です。
ほとんど「Nどおり」で置き換えられることを考えると、ちょっと使い方が違う気がしますね。
このパターンはものすごく少なく、文書で何かを案内したり・すぐ近くのものを指し示したりするときで、「ココと同じにね!」と指し示すときでしょうか。
まとめ|「Nのとおり」と「Nどおり」の違いは奥が深い・・・!
「Nのとおり」と「Nどおり」の違いについて考えてみましたが、
考えれば考えるほど奥が深く難しいですね…!
基本的な使い分けは、こちらです。
予定・計画・指示・命令などの名詞や「思う・考える」などの思考動詞の連用形について、「それと同様に」「その通りに」「そのままに」と言った意味を表す。この用法では、いつも「・・・どおり」となる。
引用:グループ・ジャマイ『教師と学習者のための日本語文型辞典』くろしお出版,1998年、P319
これに今回例文を出して考えた考察を加えると、以下のようになります。
- 基本的には「Nどおり」が多い。
- 予定・計画・指示・命令や思考の言葉など、視覚で確認できないものは、「Nどおり」になる。(例)明日は予定(×のとおり 〇どおり)、8時に出発します。
- 実体があるもの(視覚で確認できる)は、「Nのとおり」「Nどおり」のどちらもOK。(例)見本(〇のとおり 〇どおり)に書いてください。
- 「Nどおり」がNGのパターンは限られていて、文書で何かを案内したり・すぐ近くのものを指し示したりするとき。(例)下記(〇のとおり ×どおり)に書いてください。
文法分析をして、自分の中である程度パターンを見つけても例外もあったりして、日本語は本当に奥が深く難しいなぁと感じます。
だから、日本語は終わりがなく面白いのでしょうか・・・!(笑)
文法を分析するときは、できるだけたくさんの例文を出して考えますが、「Nのとおり」「Nどおり」は奥が深い文法でした…!
「Nのとおり」「Nどおり」も、今回の分析でパターン分けしても、例外が出てきそうです。
とりあえず、今回の考察はここまでにします・・・!
今回引用した参考書はこちらです↓
以上、たのすけでした。
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日本語教師たのすけです。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案・周りの目を気にしすぎる私でも、日本語教師の仕事にやりがいを持って働けるようになった授業のやり方を中心に、発信しています。